PubMedID 32541814
タイトル Characterization of starvation-induced autophagy in cerebellar Purkinje cells of pHluorin-mKate2-human LC3B transgenic mice.
ジャーナル Scientific reports 2020 06;10(1):9643.
著者 Oliva Trejo JA, Tanida I, Suzuki C, Kakuta S, Tada N, Uchiyama Y
  • Characterization of starvation-induced autophagy in cerebellar Purkinje cells of pHluorin-mKate2-human LC3B transgenic mice.
  • Posted by 順天堂大学大学院 医学研究科 老人性疾患病態・治療研究センター 谷田 以誠
  • 投稿日 2021/06/17

 昨年の研究発表になりますが、フォーラムに報告しておりませんでした数報をポストさせていただきます。

 我々は、PK-LC3(pHluroin-mKate2-LC3)蛍光プローブを発現する遺伝子導入マウス(PK-LC3 tg マウス)を作成し、脳神経細胞における、PK-LC3由来の蛍光ドットの検出を試みました。PK-LC3 tg マウスは生存・生殖・行動に特にコントロールマウスと違いは見られず、現在のところ24ヶ月程度まで生存できています。このPK-LC3 tg マウスにオートファジーを誘導すると、肝臓、腎臓、膵臓において、PK-LC3由来の蛍光ドットが増加しました。脳組織内では、大脳皮質、海馬CA1領域、歯状回、小脳プルキンエ層、小脳核、脊髄、いずれの神経細胞においても、オートファジーを誘導することでPK-LC3由来の蛍光ドットが増加していました。次に、このモデルマウスにおけるPK-LC3由来の蛍光ドットの増加がオートファゴソーム、オートリソソームの増加と相関しているか否かを確認するため、小脳の神経細胞であるプルキンエ細胞に注目し、蛍光顕微鏡および電子顕微鏡を用いた形態解析により評価しました。その結果、オートファジー誘導時の蛍光顕微鏡による蛍光ドットの増加と、電子顕微鏡解析によるオートファゴソーム、オートリソソームの増加とが極めて良い相関を示し、プルキンエ細胞内のオートファジーを反映していることから、このモデルマウスにより脳神経細胞内のオートファジー機能の評価ができることを確認しました。
 現在、我々は神経セロイドリポフスチン症モデルマウスとPK-LC3 tg マウスを交配させて、神経変性におけるオートファジーの関与を解析しようとしております。

 このマウスは、脳内の発現が弱く最初は解析をやめようとしたのですが、当時ポスドクのオリバ トレホ博士を中心に、脳組織を細かく見ていくと、飢餓に応じて蛍光シグナルが見えてきたことから、実験をスタートした経緯があります。他の臓器でも飢餓応答は見えるのですが、それらの解析はこれからかと思っております。