PubMedID | 33318540 |
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タイトル | Two-color in-resin CLEM of Epon-embedded cells using osmium resistant green and red fluorescent proteins. |
ジャーナル | Scientific reports 2020 12;10(1):21871. |
著者 | Tanida I, Furuta Y, Yamaguchi J, Kakuta S, Oliva Trejo JA, Uchiyama Y |
- Two-color in-resin CLEM of Epon-embedded cells using osmium resistant green and red fluorescent proteins.
- Posted by 順天堂大学大学院 医学研究科 老人性疾患病態・治療研究センター 谷田 以誠
- 投稿日 2021/06/17
2色の蛍光タンパク質を用いたエポキシ樹脂包埋試料のin-resin CLEMについての論文です。通常、蛍光タンパク質を用いて、細胞生物学的解析を行おうとすると、単色ではなくできれば2色以上の蛍光が利用できることが理想です。これをin-resin CLEMへと応用できないかと考えて、行った研究です。
電子顕微鏡のための生体試料作製には、超微形態を保持するために、化学薬品グルタルアルデヒド等によるタンパク質の化学固定、四酸化オスミウムによる生体膜の染色、エタノールによる脱水、エポキシ樹脂への包埋・重合反応を行います。これらの処理により、ほとんどの蛍光タンパク質は蛍光を発する能力を失ってしまいます。そこで、我々は、蛍光能が最も消失する四酸化オスミウムによる生体膜の染色直後に、細胞内で蛍光を保持する蛍光タンパク質を探索したところ、細胞の処理条件を改良することで、新たに2つの緑色蛍光タンパク質(CoGFP varinant 0とmWasabi)、1つの遠赤色蛍光タンパク質(mCherry2)が蛍光能を保持できることを見出しました。この条件では、従来からよく用いられる蛍光緑色タンパク質(mEGFP)も弱い蛍光を保持できますが、今回新たに見出した蛍光タンパク質のCoGFPv0とmWasabiは、それよりも明るい緑色蛍光を保持できることがわかりました(CoGFPv0はmEGFPの約11倍、mWasabiはmEGFPの約6.5倍)。また、遠赤色蛍光タンパク質mCherry2は以前報告していた遠赤色蛍光タンパク質mKate2よりも約3.5倍も明るい赤色蛍光を保持できることがわかりました。そこで、これらの蛍光タンパク質を発現している細胞を、電子顕微鏡用試料作製に汎用的に用いられているエポキシ樹脂包埋処理を行い、電子顕微鏡観察に使う100nm厚の超薄切片を作製し、蛍光顕微鏡で観察しました。その結果、CoGFPv0あるいはmWasabiを発現している細胞内に緑色蛍光が、mCherry2を発現している細胞に遠赤色蛍光が観察されました。また、同じ超薄切片はそのまま電子顕微鏡観察が可能でした。
次に核局在CoGFP、小胞体局在mWasabi、ミトコンドリア局在mCherry2、小胞体局在mCherry2を作製し、2色の蛍光タンパク質を使ったin-resin CLEMが可能かどうかを検証しました。その結果、核局在CoGFPと小胞体局在mCherry2、核局在CoGFPとミトコンドリア局在mCherry2、小胞体局在mWasabiとミトコンドリア局在mCherry2、のいずれの組み合わせでも、エポキシ樹脂包埋試料の100nm超薄切片にて、2色の蛍光による標的細胞小器官への局在を同時に観察することに成功しました。以上の結果より、同一の超薄切片で電子顕微鏡観察も可能であり、培養細胞で難しいとされる小胞体の膜形態の観察もできたことから、2色の蛍光タンパク質を用いたエポキシ樹脂包埋試料のTwo color In-resin CLEMを世界で初めて成功させました。
エポキシ樹脂の自家蛍光とオスミウム酸処理が蛍光タンパク質の蛍光能維持の鬼門でした。当初は、mKate2 variantとmEosEMを使えば簡単だろうと考えていたのですが、mEosEMがあまりに暗くて、電子顕微鏡用の超薄切片で蛍光を拾うのは厳しすぎました。幸いそれよりも明るい緑色蛍光タンパク質が見つかり、2色in-resin CLEMが可能となりました。
現在、3色目を求めて青〜シアンと遠赤外の領域の蛍光タンパク質を中心にスクリーニングをかけていますが、なかなか見つかりません。もしどなたか、1% オスミウム酸に耐性で、65℃72時間処理で蛍光能を維持できる蛍光タンパク質をご存知でしたら、お知らせください。