PubMedID | 34382915 |
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タイトル | Export of RNA-derived modified nucleosides by equilibrative nucleoside transporters defines the magnitude of autophagy response and Zika virus replication. |
ジャーナル | RNA biology 2021 Aug;1-18. |
著者 | Shi SL, Fukuda H, Chujo T, Kouwaki T, Oshiumi H, Tomizawa K, Wei FY |
- Export of RNA-derived modified nucleosides by equilibrative nucleoside transporters defines the magnitude of autophagy response and Zika virus replication
- Posted by 東北大学加齢医学研究所 魏 范研
- 投稿日 2021/09/01
RNAには多種多様の転写後修飾が存在しており、RNAの転写後遺伝子発現に重要である。最近我々は、RNAが細胞内で分解された後、修飾を含むヌクレオシド(以下、修飾ヌクレオシド)が積極的に細胞外に放出され、特定の受容体を活性化し、シグナル伝達因子として機能するものも存在することを発見した(小川ら、Mol Cell, 2021)。このことは、RNAの分解産物である修飾ヌクレオシドは代謝の最終産物ではなく、生理活性因子であることを強く示唆する。しかし、修飾ヌクレオシドの産生・排出に関わる分子機構は不明である。
古典的にアデノシンといった未修飾ヌクレオシドは細胞膜上のENT(Equilibrative Nucleoside Transporter)と呼ばれる一群のトランスポーターによって細胞外から細胞内へあるいは細胞内から細胞外へ輸送される。一方、ENTは核酸誘導体を分子骨格とする多くの抗ウイルス薬を輸送するため、我々は、ENTは生理的に修飾ヌクレオシドを細胞外へ輸送するトランスポーターとして機能しうると仮説を立てた。
主要なENTであるENT1とENT2のシングル欠損細胞あるいはダブル欠損細胞を作成し、細胞内外の修飾ヌクレオシドを質量分析で検討した結果、ENT1/2のダブル欠損細胞では、細胞内修飾ヌクレオシドのレベルが野生型の細胞と比べて10~100倍以上蓄積し、また細胞外飾ヌクレオシドのレベルが低下した。さらに、細胞内の修飾ヌクレオシドの蓄積は欠損細胞にENT1/2を導入することで完全に解消されることから、ENT1/2は修飾ヌクレオシドを細胞内から細胞外へ輸送するトランスポーターであることが強く示唆された。
ではなぜ細胞は修飾ヌクレオシドを恒常的に細胞外に輸送する必要があるのか。我々はAKTやLC3といったオートファジー経路に関わる因子を検討した結果、ENT1/ENT2のダブル欠損細胞は、血清が存在下の培養条件において、AKTのリン酸化レベルが低下し、LC3-IIの上昇が確認された。ダブル欠損細胞におけるこれらオートファジー関連因子の変動は、ENT1/2の再導入によって解消された。重要なことに、修飾ヌクレオシドを一種類ずつ野生型細胞に投与し、オートファジー誘導能を検討した結果、m1G(1-methylguanosine)やIm(2’-O-methylinosine)といった修飾ヌクレオシドがLC3-IIの蓄積を誘導することを見出した。さらに我々は、ウイルス感染・増殖をモデルにENT1/2と修飾ヌクレオシドの役割を検討した。その結果、修飾ヌクレオシドが蓄積するENT1/2変異細胞では、オートファジー機構を利用して増殖するZIKAウイルスの複製が顕著に亢進した。
以上の結果により、修飾ヌクレオシドはオートファジーの誘導因子としての機能を有しており、生理条件下では細胞は修飾ヌクレオシドが過剰に蓄積しオートファジーが誘導される事態を回避するため、ENT1/2を介して修飾ヌクレオシドを恒常的に細胞外に放出していると考えられた。一方、ENT1/2ダブル欠損細胞では修飾ヌクレオシドの放出が完全に阻害されないことから、ENT1/2以外のトランスポーターなどを介する機構が存在することが明らかであり、これらの未知な修飾ヌクレオシド輸出機構の解明が今後の重要課題である。