PubMedID | 36394115 |
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タイトル | Oxidative stress-induced phosphorylation of JIP4 regulates lysosomal positioning in coordination with TRPML1 and ALG2. |
ジャーナル | The EMBO journal 2022 Nov;41(22):e111476. |
著者 | Sasazawa Y, Souma S, Furuya N, Miura Y, Kazuno S, Kakuta S, Suzuki A, Hashimoto R, Hirawake-Mogi H, Date Y, Imoto M, Ueno T, Kataura T, Korolchuk VI, Tsunemi T, Hattori N, Saiki S |
- 酸化ストレスによってリン酸化されたJIP4はTRPML1、ALG2と協調してリソソーム分布を制御する。
- Posted by 順天堂大学大学院医学研究科 笹澤 有紀子
- 投稿日 2022/11/22
先日、EMBO J誌に掲載された私たちの論文をご紹介させていただきます。
近年、リソソームの空間配置はオートファジーの重要なレギュレータの一つであることが明らかとなっています。ダイニン依存的なリソソームの逆行輸送には、主にTRPML1-ALG2, TMEM55B-JIP4, RILP-Rab7などのタンパク質複合体が関与することがこれまでに報告されていますが、それらのシグナルのクロストークや生理的病理的意義は十分に理解されていませんでした。
私たちは、健常者とパーキンソン病患者の血清成分を比較し、酸化ストレスを誘導するアルデヒドであるアクロレインがパーキンソン病患者群で増加することを見出しました。さらに、Neuro blastoma SH-SY5Y細胞で、アクロレインはリソソームを微小管形成中心(MTOC)周辺に集め、オートファジーを誘導するというユニークな活性を示したため、その作用機序解明を進めました。その結果、アクロレインによるリソソーム集積にはTRPML1-ALG2、及びJIP4が関与することが分かりました。一方で、既報とは異なり、JIP4はTMEM55B依存的には働いていませんでした。さらに、アクロレインによりJIP4の T217がリン酸化されること、そのリン酸化がアクロレインによるリソソーム集積に必須であることを見出しました。Kinase阻害剤キットを用いてKinaseを探索した結果、Ca2+/カルモジュリン依存性キナーゼの一つであるCaMK2GをJIP4のKinaseとして同定しました。また、近接ライゲーションアッセイによりJIP4はALG2と複合体を形成することが明らかとなりました。一方、アクロレインは酸化ストレスを誘導しますが、H2O2処理でも同様の経路でMTOCへリソソームが集積することが分かりました。
以上より、酸化ストレスにより、「TRPML1を介しCa2+が放出され、CaMK2Gが活性化されJIP4がリン酸化される、そのリン酸化JIP4がTRPML1/ALG2と相互作用することでリソソームの逆行輸送を行う」という一連のシグナルを明らかにしました。
また、JIP4ノックアウト細胞ではアクロレインによるリソソーム集積とオートファジーが起きませんが、この細胞はアクロレインの毒性に対して脆弱になることが分かりました。この結果は、JIP4を介したリソソーム集積は酸化ストレスに対する防御応答として働くことを示唆しています。現在はこのシステムがパーキンソン病の創薬ターゲットとなると考え、さらなる研究を進めています。
本研究は、順天堂大学神経学講座 服部信孝先生、斉木臣二先生を始め順天堂大学の先生方のご指導、技術員の皆様のご協力のもと論文にまとめることができました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。