PubMedID 36735498
タイトル CCPG1 recognizes endoplasmic reticulum luminal proteins for selective ER-phagy.
ジャーナル Molecular biology of the cell 2023 Apr;34(4):ar29.
著者 Ishii S, Chino H, Ode KL, Kurikawa Y, Ueda HR, Matsuura A, Mizushima N, Itakura E
  • CCPG1が小胞体内腔タンパク質をER-phagy分解へ導く
  • Posted by 千葉大学大学院 理学研究院 生物学研究部門 板倉英祐
  • 投稿日 2023/04/03

 最近発表した我々の論文を紹介させていただきます。東大水島研との共同研究として行いました。

 不要な小胞体をオートファゴソームで囲み、分解へ導くER-phagyに関わるER-phagy receptorが、ここ5年ほどで次々と報告され、その分子機構が判明してきました。しかし、仮に小胞体内腔に異常タンパク質が生じた場合、小胞体膜で隔てられてた細胞質側のオートファジー因子が、小胞体の内側の異常タンパク質をどのように認識して、ER-phagyによって分解するのかよくわかっていませんでした。
 アミロイド形成が知られているIAPP(Islet amyloid polypeptide)を6回タンデムに融合した6xIAPPは、その発現のみで凝集体形成します。そこで我々は、ER-phagyモデル基質として、6xIAPPを小胞体内腔に発現させ、その分解機構を調べました。その結果、ER-phagy receptorの1つ、小胞体膜上1回膜貫通タンパク質であるCCPG1が6xIAPPをER-phagyへ導くことを突き止めました。さらにCCPG1の内在性のER-phagy基質としてP3H4(小胞体内酵素)も同定しました。その認識機構の詳細を調べたところ、CCPG1の小胞体内腔ドメインには、複数のcargo interacting region(CIR)が存在し、基質と直接結合することがわかりました。一方で、CCPG1の細胞質ドメインはLIRとFIRを介してそれぞれLC3とFIP200と結合することが知られています。つまり、CCPG1が小胞体内腔基質とオートファゴソーム膜との両方の受容体として働くことで、小胞体内腔基質をオートファジー分解へ導くことがわかりました。
 今後、CCPG1の発現調節機構や、小胞体内腔ドメインのcargo認識の分子機構などを解き明かすことで、小胞体品質管理機構としてのER-phagyの新しい側面を展開できると期待できます。