PubMedID 37987447
タイトル Microautophagy regulated by STK38 and GABARAPs is essential to repair lysosomes and prevent aging.
ジャーナル EMBO reports 2023 Dec;24(12):e57300.
著者 Ogura M, Kaminishi T, Shima T, Torigata M, Bekku N, Tabata K, Minami S, Nishino K, Nezu A, Hamasaki M, Kosako H, Yoshimori T, Nakamura S
  • ミクロオートファジーによるリソソーム修復経路を発見
  • Posted by 大阪大学大学院生命機能研究科 小倉 もな美
  • 投稿日 2023/12/22

先日、EMBO reports誌に掲載された私達の論文を紹介させていただきます。

リソソームはさまざまな病原因子や老化に伴って膜が損傷を受けることが知られ、リソソームの損傷は病態悪化や老化進行に寄与していると考えられています。最近の研究から、細胞はリソソーム損傷応答と総称される複数の経路を駆使し、リソソームの損傷に対処していることがわかってきました。私達の研究グループでもこれまで、損傷リソソームの除去機構やリソソーム生合成の活性化機構を見出し、これらがリソソーム損傷を伴う疾患に対して防御的に働くことを報告してきました (Maejima et al., EMBO J, 2013; Nakamura et al., Nat Cell Biol, 2020)。これらに加え、ESCRT複合体によるリソソーム膜の修復やミクロオートファジーによるリソソーム膜の選択的分解など、リソソームの恒常性維持に関わる多様な応答が次々に報告されています。しかし依然として、リソソーム損傷応答の各経路の実態やそれらの制御機構、そして老化に対する生理学的意義についてはあまり明らかとなっていませんでした。

今回私達は、リソソーム損傷応答の新たな制御因子の探索を行い、STK38というキナーゼを同定しました。STK38は損傷に応答してリソソームに局在し、ESCRT因子の一つであるVPS4のリクルートに寄与していることが分かりました。また、これまでESCRTによるリソソーム修復の明確なメカニズムは不明でしたが、私達はこれがリソソーム膜のミクロオートファジーによるものであることを見出し、両者が同一経路であることを示しました。即ち、STK38がVPS4のリクルート制御を介し、ミクロオートファジーによるリソソーム修復を制御していると考えられます。私達はさらに、マクロオートファジー非依存的なATG8の脂質化がESCRT複合体のリソソーム上でのアセンブリに必要であることを見出しました。興味深いことに、ATG8の2つのサブファミリーのうちGABARAPファミリーが主にこの機能を担っており、リソソームの膜に脂質化されたGABARAPsがESCRT複合体と相互作用し、リソソーム上での集積を誘導していることが示唆されました。最後に、STK38やGABARAPsの欠損によってリソソームの損傷が増加し、細胞の老化亢進や個体の寿命低下を引き起こしたことから、これらの因子が老化過程においてもリソソームの恒常性維持に寄与していること、そして老化に対して防御的に働いていることが示唆されました。

最後に、本研究を進めるにあたり、徳島大学の小迫先生をはじめ多くの先生方にご助力いただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。