PubMedID 38141606
タイトル The UFM1 system: Working principles, cellular functions, and pathophysiology.
ジャーナル Molecular cell 2023 Dec;.
著者 Komatsu M, Inada T, Noda NN
  • UFM1システム:作動原理、細胞機能、病態生理
  • Posted by 順天堂大学大学院 医学研究科 器官・細胞生理 小松雅明
  • 投稿日 2023/12/25

東京大学の稲田利文先生、北海道大学の野田展生先生とのUbiquitin-fold modifier 1(UFM1)システムに関する総説が掲載されましたのでご紹介させて頂きます。
UFM1システムはユビキチン様修飾反応系であり、来年で発見から20年となります。2019年にRon KopitoのグループによりリボソームサブユニットRPL26のUFM1修飾が小胞体におけるリボソーム関連品質管理(ER-RQC)に機能すること(Walczak et al., PNAS 2019)、そしてJacob E Cornのグループから小胞体の選択的オートファジー(ER-phagy)に関連する因子のゲノムワイドスクリーニングからUFM1システムを構成するコンポーネントが同定されたこと(Liang et al., Cell 2020)から、UFM1システムによる翻訳管理、小胞体品質管理に注目が集まっています。
本総説は、
1. UFM1システムの構造基盤による作動原理
2. UFM1の細胞内機能(ER-RQC、ER-phagy)
3. 遺伝子改変マウスから明らかになったUFM1の生理作用
4. UFM1関連因子の変異が引き起こすヒト疾患
5. UFM1システム研究の課題
から構成されています。
2023年12月に開催されたKeystone Symposia(ユビキチンとオートファジーのジョイント)でもUFM1に関する口頭発表、ポスター発表が出ており、これから大きく発展する予感がしています。是非、若い方には読んで頂き、私の研究室のUFM1グループに参画して頂ければ嬉しいです(オートファジーもやってます)。

ここからはUFM1システム発見当時の私の大学院、ポスドク時代を振り返りたいと思います。時間があればお読みください。ご存じの通り、オートファジー研究におけるユビキチン様修飾システムと言えばATG12-conjugation system(Mizushima N et al., Nature, 1998)、ATG8-conjugation system(Ichimura Y, et al., Nature, 2000)であり、この二つの発見がオートファジー研究領域の発展に大きく寄与したことは言うまでもありません。1990年代後半、私は木南英紀教授(現 順天堂大学学長特別補佐)の研究室に博士課程の大学院生として参加していました。酵母APG7(現在はATG7)に結合する因子の探索のため、APG7をベイトに酵母ツーハイブリットスクリーニングをひたすら行っていました。ところがヒットしてくるのはAPG7というなんとも冴えない状況でした。そんな最中に大隅先生の研究室からATG8-conjugation systemがNature誌に報告されました(Ichimura Y, et al., Nature, 2000)。結局、私の実験結果はAPG7がホモダイマーを形成することを意味しており(Komatsu M et al., J Biol Chem 2001)、その詳細は後年 野田さんらのATG7の構造解析により証明されることになりました(Noda NN et al., Mol Cell 2011)。2001年に木南先生の特定領域研究(現在の学術変革の様なグループ研究)「蛋白質分解-新しいモディフアイアー蛋白質による制御」が開始されると、Atg7の遺伝子欠損マウスの作製のため私は東京都臨床医学総合研究所の田中啓二先生(現 東京都医学総合研究所理事長)のところで研究をする機会を頂きました。当時はまだマウスのゲノム解読が終わっておらず(当然、CRISPR-Cas9ない)、遺伝子改変マウスの作製はとても時間のかかる作業でした。2001年のJ Biol Chemから2005年のJ Cell Biol (条件付きオートファジー不能マウスAtg7flox/floxマウスの作製)までオートファジーに関する筆頭論文は0でした。田中先生、木南先生には忍耐強く雇用して頂いたと感謝しています(あるいは存在を忘れていたか?)。さて、Atg7やAtg3の遺伝子改変マウスの作製を行っていた当時、有り余る時間?と体力を生かし別プロジェクトをこっそり開始することにしました。2002年だったか、流しのタンパク質科学者Nにユビキチン活性化酵素にホモロジーのあるFLJ23251(現在はUBA5と呼ばれている)の結合タンパク質の質量分析をお願いするチャンスがありました。Nの技術は凄まじく、直ちにBM-002、CGI-126、KIAA0776というタンパク質を同定してくれました。これらは、現在、UFM1、UFC1(E2)、UFL1(E3)と呼ばれUBA5 (E1)とともに、ユビキチン様修飾反応系UFM1システムを形成します(Komatsu et al., EMBO J 2004など)。筆者はメンターTの目を盗んでは、UFM1システムの解析を進め、UFM1システムが造血や神経発達に必要なこと(Tatsumi et al., Nat Commun 2010など)、UFM1システムをコードする遺伝子変異がヒトの遺伝性発達障害を引き起こすこと(Muona M, Ishimura R et al., Am J Hum Genet 2016, Nahorski MS, Maddirevula S, Ishimura R et al., Brain 2018など)などを明らかにしました。私のUFM1研究は、加熱するオートファジー研究で疲れた心を癒やしてくれる一服の清涼剤であった。上述の通り、2020年、「UFM1システムがシート状小胞体のオートファジーを介在する」旨の内容が報告された(Liang et al., Cell 2020)。ああ、お前もか。
(一部、実験医学online「選択的オートファジー:狙われる理由が進む(https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/book/9784758125468/2030.html)」からの抜粋。)