PubMedID 23921551
タイトル Autophagy sequesters damaged lysosomes to control lysosomal biogenesis and kidney injury.
ジャーナル EMBO J, 2013 Aug 28;32(17);2336-47,
著者 Maejima I, Takahashi A, Omori H, Kimura T, Takabatake Y, Saitoh T, Yamamoto A, Hamasaki M, Noda T, Isaka Y, Yoshimori T
  • オートファジーによる損傷リソソームの隔離
  • Posted by 大阪大学 医学系研究科 前島郁子
  • 投稿日 2013/10/09

少し前に受理されました私たちの論文を紹介させていただきます。

 リソソームは生体内において、シリカや尿酸結晶などの結晶物、細菌毒素、脂質や薬剤など様々な物質によって損傷されることが報告されていましたが、リソソームが損傷した場合に細胞がどのように対応しているのかは明らかにされていませんでした。
 そこで、本研究では、まず損傷したリソソームがオートファジーの標的になるかを、培養哺乳類細胞を用いて検討しました。その結果、薬剤などで人為的にリソソームを損傷すると、損傷リソソームがユビキチン化され、オートファゴソームに包み込まれることを見いだしました。短時間の薬剤処理により一時的に損傷リソソームを発生させると、通常の細胞では経時的に損傷リソソームが減少し正常なリソソーム数が増加したのに対し、オートファジー欠損細胞では損傷リソソームの減少はほとんど見られませんでした。さらに、オートファジー欠損細胞では損傷リソソームが減少しないにも関わらず細胞全体のリソソーム数に変化はありませんでした。これらの結果より、損傷リソソームがオートファジーによって選択的に隔離されることで、新しいリソソームが形成されリソソームの機能が回復していることが明らかとなりました。
 損傷リソソーム除去の生理的な意義を検討するために、本研究では急性高尿酸血性腎症に着目しマウス個体を用いて解析を行いました。急性高尿酸血性腎症は、血中の尿酸値の上昇により起こる腎障害で、リソソームを損傷する尿酸結晶の形成を伴います。マウスに尿酸を投与し高尿酸血症を誘発させると、マウス腎近位尿細管細胞のリソソームが損傷し、オートファゴソームによって隔離されている様子が多数観察されました。一方、近位尿細管特異的Atg5欠損マウスではリソソームの損傷は見られたものの、損傷リソソーム周囲でのオートファゴソーム形成は認められませんでした。また、尿酸を投与した近位尿細管特異的Atg5欠損マウスでは腎組織傷害の重篤化と腎機能の低下が見られたことから、オートファジーは尿酸結晶により損傷したリソソームを隔離することで、高尿酸血性腎症の病態悪化を防ぐのに貢献していると考えられます。

尿酸は痛風の原因にもなりますが、2型糖尿病を起こすヒトIAPP、動脈硬化を起こすコレステロール結晶などもリソソームに穴をあけることが知られています。これらの生活習慣病の発症抑制にオートファジーが関与するという報告がありますが、それは損傷リソソーム除去による可能性が考えられ、オートファジーを人為的に活性化することができたら、生活習慣病の予防治療へつながる可能性が示唆されます。