PubMedID 24681842
タイトル Fluorescence-based visualization of autophagic activity predicts mouse embryo viability.
ジャーナル Sci Rep, 2014;4533,
著者 Tsukamoto S, Hara T, Yamamoto A, Kito S, Minami N, Kubota T, Sato K, Kokubo T
  • オートファジーを指標に受精卵のその後の発生能を予測できるか
  • Posted by 放射線医学総合研究所 研究基盤センター 塚本 智史
  • 投稿日 2014/04/02

最近掲載されました私たちの論文を紹介させて頂きます。
形態的には全く同じように見える受精卵ですが、1個1個の受精卵の発生能は異なります。そのために(マウスの)お母さんの体内へ移植する際には、顕微鏡下でできるだけ見た目が良さそうな受精卵を選んでいます。ところが、見た目が悪い受精卵でも移植してみると着床して胎児になることもあります。マウスのようにたくさん(20個くらい)受精卵を体内へ戻せる場合はあまり気にしていませんが、人のように子宮に戻せるのは原則1個の場合はより厳密に受精卵の品質をチェックしないといけません。しかし、一般的に行われているのは形態的な観察による評価で、これだと受精卵を観察する人の経験やセンスなどにも左右されてしまいます。この点で別の視点からのアプローチが必要だと考えました。今回私たちは、体外受精後のマウス受精卵に(GFP-LC3タンパク質をコードするmRNAを顕微注入することで)GFP-LC3を発現させて細胞質全体の蛍光レベルを経時的に観察しました。その結果、体外受精48時間後(4細胞期)までに急速にGFP-LC3の蛍光が消失することが分かりました。この消失はオートファジーが働かない受精卵やバフィロマイシン処理した受精卵では抑制されたことから、オートファジー依存的に起こっていることが分かりました。また、GFP単独や他のオルガネラに局在させたGFPタンパク質の分解は4細胞期までには起こりませんでした。次に14ヶ月齢のメスマウス由来の受精卵(老化卵)を使って同様の実験を行ったところ、一部の卵で4細胞期までに起こるGFP-LC3の分解が遅延することが分かりました。この時期までの発生は通常の実験に使っていた若いマウスの卵でも老化卵でも正常であることから、加齢によって(一部の卵では)オートファジーによるGFP-LC3の分解不全が起こっていると考えられました。最後にGFP-LC3の分解を指標にして、4細胞期の受精卵を2群に分類(Good:GFP-LC3の蛍光が消失している、Poor:GFP-LC3の蛍光が残存している)して、別々に仮親へ移植しました。その結果、Goodと判定した受精卵からより多くの産仔を得ることに成功しました。これらの結果は、受精卵のオートファジーの起こりやすさを指標にすれば、あらかじめその後の胚発生能が予測できることを示唆しています。受精卵の発生過程では、オートファジーによって母性タンパク質などの細胞質因子が積極的に分解される必要があることから、分解活性が高い受精卵ほど発育能が高いのかもしれません。残念ながらヒトの卵にはRNAなどの核酸を顕微注入することができないので、本法をベースにした(もっと簡単な)代替法を今後開発していきたいと思っています。