PubMedID 25023287
タイトル Stearoyl-CoA desaturase 1 activity is required for autophagosome formation.
ジャーナル J Biol Chem, 2014 Jul 14; [Epub ahead of print]
著者 Ogasawara Y, Itakura E, Kono N, Mizushima N, Arai H, Nara A, Mizukami T, Yamamoto A
  • SCD1活性はオートファジー初期過程に必要である
  • Posted by 長浜バイオ大学大学院バイオサイエンス研究科 小笠原裕太
  • 投稿日 2014/07/31

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 私たちは、オートファジーの分子機構を解析することを目的として、分子多様な分子構造を持つ低分子ケミカルライブラリーからオートファジー阻害剤をスクリーニングし、数種の薬剤を見出しました。このオートファジー阻害剤の1つは、Stearoyl-CoA desaturase 1 (SCD1)の阻害剤と構造が類似していました。SCD1は小胞体膜上でオレイン酸などの不飽和脂肪酸の合成を触媒しており、肥満や糖尿病に関与していることがよく知られています。
 本研究では、まず、SCD1の阻害剤28cが飢餓誘導性オートファジーを抑制することをGFP-LC3顆粒の形成とLC3-IIの免疫ブロット解析により示しました。28cによるオートファジーの阻害はSCD1の過剰発現あるいは、オレイン酸の添加によって解除されることからオートファジーの誘導にSCD1活性が必要であることが示されました。さらに、28c処理した細胞ではオートファジー初期因子であるULK1の飢餓に伴う顆粒形成が抑制されることが蛍光顕微鏡観察によって明らかになりました。この時、ULK1の上流因子であるmTorの活性については抑制されたままでした。また、オレイン酸の添加によって28c 存在下でもULK1が顆粒形成することを示しました。以上の事実からSCD1活性がオートファジー初期過程において必要とされていることが明らかになりました。

 オートファゴソームの形成においては、一連のAtgタンパク質群が階層的にオートファゴソーム形成部位や隔離膜へリクルートされる必要があります(Itakura et al., 2010)。しかし、その機構については現在のところほとんど不明です。今後、不飽和脂肪酸の合成とAtgタンパク質のオートファゴソーム形成部位へターゲッティングとの関係について明らかにしたいと考えています。