PubMedID 25737544
タイトル Atg13 HORMA domain recruits Atg9 vesicles during autophagosome formation.
ジャーナル Proc Natl Acad Sci U S A, 2015 Mar 3; [Epub ahead of print]
著者 Suzuki SW, Yamamoto H, Oikawa Y, Kondo-Kakuta C, Kimura Y, Hirano H, Ohsumi Y
  • Atg13のHORMAドメインはAtg9ベシクルのPASへのリクルートに機能する
  • Posted by 東京工業大学 フロンティア研究機構 鈴木 翔
  • 投稿日 2015/03/12

最近、私たちが発表した論文を紹介させていただきます。

出芽酵母では、オートファジーが誘導されると、多くのAtgタンパク質が液胞近傍の1点に局在し、オートファゴソームの形成を媒介するPAS (pre-autophagosomal structure)を構築します。PAS形成において最上流に位置するのが、PAS形成の足場となるAtg1複合体の形成です。Atg1複合体(哺乳類では、ULK1複合体に相当)はAtg1, Atg13, Atg17, Atg29, Atg31から構成され、その構成因子であるAtg13が複合体形成に中心的な役割を担うことが知られています。Atg13は構造的特徴によって、N末端のHORMAドメイン, C末端の天然変性領域と大きく2つに分けられます。これまで、私たちはC末端の天然変性領域がAtg1複合体の形成に必須な役割をはたすことを報告してきました(Fujioka Y et al., Nat. Struct. Mol. and Biol. 2014)。N末端のHORMAドメインもオートファジーに必須な領域なのですが、Atg1複合体の形成には必要なく、その分子機能はよく分かっていませんでした。

今回、私たちはAtg13のHORMAドメインと物理的に相互作用する因子を探索し、Atg13のHORMAドメインはAtg9と直接結合することを見出しました。Atg9はゴルジ体由来の小胞(Atg9ベシクル)に局在する膜タンパク質です。Atg9ベシクルはAtg1複合体が形成すると、PASへと局在し、膜形成の核として機能すると考えられています。変異解析の結果、HORMAドメインは、飢餓に応答してAtg9ベシクルをPASへとリクルートするのに機能していることが見出しました。以上より、Atg13は、PAS形成の最初のステップでは、C末端の天然変性領域を介してPASの足場構築(Atg1複合体形成)を制御していますが、次のステップでは、HORMAドメインを介してAtg9ベシクルをPASへとリクルートに機能することが明らかとなりました。このように、Atg13は2つの領域を使い分け、オートファジーの初期過程における異なる2つのステップを巧妙に駆動していると考えています。

なお、これまでHurleyらが、Atg13のHORMAドメインはPI 3-キナーゼ複合体のPASヘのリクルートに機能すると報告していましたが(Jao CC et al., PNAS 2013)、彼らの解析では、PI 3-キナーゼ複合体とAtg13の相互作用は観察されておらず、彼らの結論を直接的に支持する実験的証拠は提示されていませんでした。今回、私たちは、Atg13のHORMAドメインは、PI 3-キナーゼ複合体のPAS局在に必要なAtg9をPASへとリクルートしていることを明らかとしました。このことから、HORMAドメインは、PI 3-キナーゼ複合体ではなく、Atg9ベシクルのPASへのリクルートを媒介すると結論しました。

富栄養条件下では、選択的オートファジーであるCvt経路が進行しており、Atg9ベシクルはCvt経路に特異的に機能するAtg11を介してPASへとリクルートすることが示されています。興味深いことに、HORMAドメインの変異体はオートファジーの活性に顕著な欠損を示しますが、Cvt経路は欠損を示しませんでした。このことは、富栄養条件下ではAtg11がAtg9ベシクルをリクルートし、Cvt経路を進行させるのに対し、飢餓条件下ではAtg13がAtg9ベシクルのPAS局在を担い、オートファジーを進行させること意味しています。Cvt経路とオートファジーでは、異なるAtgタンパク質(Atg11とAtg13)がAtg9ベシクルをPASへとリクルートしているという点は興味深く、オートファジーの膜動態を考える上で何かヒントとなる知見を与えてくれているのではないかと考えています。