PubMedID 27846365
タイトル Lysosomal membrane protein SIDT2 mediates the direct uptake of DNA by lysosomes.
ジャーナル Autophagy, 2016 Nov 15; [Epub ahead of print]
著者 Aizawa S, Contu VR, Fujiwara Y, Hase K, Kikuchi H, Kabuta C, Wada K, Kabuta T
  • SIDT2はDNautophagyにおけるDNAの取り込みを仲介する
  • Posted by 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第四部 Contu Raluca
  • 投稿日 2016/11/22

私達はリソソームによる核酸分解経路RNautophagyとDNautophagy(RDA)について研究を行っています。これらの分解経路においては、核酸がATPの消費を伴ってリソソーム内に直接取り込まれ、分解されます。また、線虫においてRNAトランスポーターとして機能するSID-1タンパク質の哺乳類オルソログの一つであるリソソーム膜タンパク質SIDT2は、RNautophagyにおけるRNAの取り込みを仲介することも報告しています。

本研究ではDNautophagyにおいてもSIDT2が機能するかどうかを検討しました。

SIDT2を過剰発現させた単離リソソームにおいてDNautophagy活性が上昇し、DNAの取り込み量が増加しました。DNAの取り込み量増加は生化学的手法と免疫電子顕微鏡法によって確認しました。また、SIDT2によるRNA取り込み活性を阻害する変異(S564A)はDNAの取り込みも阻害しました。SIDT2をノックダウンさせた単離リソソームではDNA取り込み量が減少し、DNautophagy活性が低下しました。以上の結果からSIDT2はDNautophagyにおけるDNAの取り込みを仲介することが示されました。

様々な核酸に対する単離リソソームの取り込み活性を測定しました。環状DNAと比較して直鎖状DNAの方が同じ時間でより多く取り込まれました。また、RNAとDNAのリソソーム内への取り込み量には有意な差がありませんでした。実験に使用したリソソームと直鎖状DNAはそれぞれ約200 nmの直径と約1800 nmの長さであることを考慮すると、やはりRDAにおける核酸取り込みはリソソーム膜変形を伴うミクロオートファジーのような機構を介しているよりもトランスポーターを介している方が妥当であると考えられました。

今までの私達の研究と今回の報告からSIDT2は核酸トランスポーターであることが強く示唆されました。現在、輸送活性を示すために研究を行っているところです。また、DNautophagyの生理的意義などに関してはさらなる研究が必要ですが、本研究成果はRDAの分子メカニズム解明に貢献すると考えております。