PubMedID 27903607
タイトル Mitochondrial division occurs concurrently with autophagosome formation but independently of Drp1 during mitophagy.
ジャーナル J Cell Biol, 2016 Nov 30; [Epub ahead of print]
著者 Yamashita SI, Jin X, Furukawa K, Hamasaki M, Nezu A, Otera H, Saigusa T, Yoshimori T, Sakai Y, Mihara K, Kanki T
  • マイトファジー時のミトコンドリア分裂はオートファゴソーム形成と同時に起きる
  • Posted by 新潟大学大学院医歯学総合研究科機能制御学分野 山下 俊一
  • 投稿日 2016/12/04

先日出版された私たちの論文を紹介させていただきます。

ミトコンドリアの形態は非常に多様性に富んでおり、ミトコンドリア分裂装置と融合装置によって絶えず形態を変化させています。これまで、マイトファジー時には、ミトコンドリアの一部分が分解に適当な大きさに断片化されたのちに、オートファゴソームに包み込まれると考えられてきました。

本論文で、私たちは出芽酵母、メタノール資化性酵母と哺乳類培養細胞で、ミトコンドリア分裂必須因子 Dnm1/Drp1 をノックアウトしても、マイトファジーが見られることを明らかにしました。また、Dnm1/Drp1 KO 細胞でも、マイトファジー誘導時には小さな断片化したミトコンドリアとしてオートファゴソームに包み込まれていることを電子顕微鏡と蛍光顕微鏡観察により明らかにしました。さらに、タイムラプス解析によって、低酸素や鉄キレート剤によるマイトファジー誘導時には、チューブ状の大きなミトコンドリア上に、GFP-LC3 のシグナルが現れ、その部分での隔離膜の伸長と同時にミトコンドリアが出芽してきて、最後はミトコンドリアがオートファゴソームに包み込まれながら分裂することを明らかにしました。この現象は Drp1 KO 細胞でも同様に見られました。このようなマイトファジー時のミトコンドリアの断片化は、FIP200, ATG14, WIPI2 などの隔離膜形成過程に必須な因子に依存しており、隔離膜が伸長し、オートファゴソームへと成熟していく過程がミトコンドリアの断片化に重要な役割を果たしていると考えられます。

今回の論文で、先ずミトコンドリア分裂が起きてから、オートファジーによって認識されるという従来のマイトファジーモデルとは異なる、チューブ状の大きなミトコンドリアの一部が、オートファジーによって認識され、その部分でのオートファゴソーム形成に伴いミトコンドリアが切り取られるという新しいモデルを提唱することができました。今後は、一見正常に見える、つながった大きなミトコンドリアの一部がどのようにして認識されるのか、ミトコンドリアは Drp1 依存的分裂以外のどのような方法で分裂するのか、などの分子機構解明に進んでいきたいと考えています。

この論文は、JCB の Newest article の中で Spotlight として取り上げていただいておりますので、そちらも参考にしてただければと思います。

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  • 隔離膜は強い!?
  • 東京大学医学部  水島昇  2016/12/04

山下さん、神吉さん、おめでとうございます。とても重要な発見だと思います。隔離膜の縁がミトコンドリアを物理的に食いちぎっているのか、生物学的な断片化を誘導しているのか、どちらでも大変面白いと思います。ATG3やATG5がなくても断片化するというデータも重要で(図9)、やはりエッジは「ほぼ」閉じていることを意味しているのだと思います。あるいは、この場合は「完全に」閉じているのだとすればさらに驚きですが・・・

と、このようにオートファジーフォーラムはコメントすることもできます。

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  • 隔離膜のエッジが形成するリングの重要性?
  • 新潟大学大学院医歯学総合研究科機能制御学分野  山下 俊一  2016/12/05

コメントありがとうございます。

私たちは、ATG5 や ATG3 欠損細胞で、この現象のタイムコースや隔離膜の状態など、詳細な検討ができていないので、今後詳細に解析したいと思います。

物理的にミトコンドリアをちぎると考えた場合は、隔離膜のエッジが、ミトコンドリアを constriction して分裂を引き起こすのに十分な小ささまで閉じれば(この場合はエッジとミトコンドリアとの接点にどんな分子機構があるのかはとても興味深いです)、隔離膜が完全に閉じなくても可能だと思います。

もしくは、隔離膜の縁が分裂リングのような役割を果たすと考えれば、こちらも完全に閉じなくても可能だと思います。分裂サイトで、少しミトコンドリアが伸長しているように見えるので、隔離膜のエッジのリングの内側で、特別な分裂装置が機能しているのかもしれません。

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  • 新潟大学大学院医歯学総合研究科  神吉智丈  2016/12/07

水島先生、コメント有難うございます。
私たちがKeimaを使ってMitophagyを見る場合、オートリソソームの状態まで進んで初めて検出することになります。ATG5が無くても、効率は下がりますが、酸性化されたKeimaは十分に検出できますので、ミトコンドリアがリソソームで分解されることはほぼ間違いないと考えています。ただ、その過程で隔離膜が「完全に閉じた」か、「ほぼ閉じた」だけなのかは、判定できてません。ただ、ほぼ閉じた状態でリソソームが融合してきたら、どうやって内側に相当する部分の膜だけ分解できるのだろうかと考えてしまいます。そうやって考えていくと、野生型ではオートファゴソームは本当に完全に閉じているのか?正常でもピンホールが空いていて、そこをAtg8/LC3が繋ぎ止めている(ピンホールが広がらないように)だけでも良いかもしれない、とか、いろいろ可能性はあるかもしれないと思ってしまいます。