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生体レベルにおけるカスパーゼ生理機能を制御する基質の遺伝学的解析

写真:倉永英里奈

東京大学 大学院薬学系研究科
遺伝学教室 講師
倉永 英里奈

本研究では、タンパク質分解酵素であるカスパーゼファミリーに着目し、個体レベルでの生理的役割を明らかにすることを目指す。システインプロテアーゼであるカスパーゼは、その限定分解によってさまざまな代謝基質を切断し、細胞機能を誘導する。カスパーゼによって出力される細胞生理機能では主に細胞死が知られているが、それ以外にも、個体や細胞でカスパーゼ活性を抑制した実験から、この酵素が細胞死のみならず多くの生命現象(炎症性サイトカインの放出、貪食、細胞の増殖や分化、細胞移動)に関わることが我々を含む複数の研究グループによって示されてきた。我々はこれまでに、カスパーゼ標的配列の切断に基づいて、カスパーゼ活性化をリアルタイムでモニター出来る、蛍光蛋白質プローブの開発に成功した。本研究の実施方法として、(1)個体レベルでのシグナルイメージング解析を用いてカスパーゼの活性動態を個体の中の生きた細胞で観察し、カスパーゼの関わる生理現象を探索する、(2)スクリーニングによりカスパーゼが関与する生理機能を介在する基質の同定を試みる。カスパーゼの生理的多様性を解明し、そのターゲット基質を同定することで、タンパク質分解が関与する生理機能メカニズムの解明を目指す。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Takemoto, K., Kuranaga, E., Tonoki, A., Nagai, T., Miyawaki, A., and Miura, M.: Local initiation of caspase activation in Drosophila salivary gland programmed cell death in vivo.
    Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 104, 13367-13372, 2007
  2. Kuranaga, E., Kanuka, H., Tonoki, A., Takemoto, K., Tomioka, T., Kobayashi, M., Hayashi, S., and Miura, M.: Drosophila IKK-Related Kinase regulates non-apoptotic function of Caspases via degradation of IAPs.
    Cell 126, 583-596, 2006
  3. Kanuka, H., Kuranaga, E., Takemoto, K., Hiratou, T., Okano, H., and Miura, M.: Drosophila caspase transduces Shaggy/GSK-3b kinase activity in neural precuorsor development.
    EMBO J 24: 3793-3806, 2005

ひと言!

ショウジョウバエが大人になっていく最中の、からだの中をのぞいています。細胞1個1個が別々の生き物みたいにふるまう様子は、いつ見てもかわいくて感動的です。生きたシグナルをイメージングにより解析することで、細胞のことばを理解したいです。どうぞよろしくお願いいたします。

Web page

http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~genetics/index.html

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