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神経変性疾患発症における一酸化窒素による小胞体膜存在ユビキチンリガーゼの機能変化

写真:上原孝

北海道大学 大学院薬学研究院
薬理学研究室 准教授
上原 孝

アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患発症のメカニズムについては精力的な研究が展開されているものの、今もって不明な点が多く残されている。脳萎縮・神経脱落部位では変性蛋白質の蓄積が認められ、蛋白質品質管理系に何らかの異常が起こっていることが示唆されている。パーキンソン病の家族性疾患ではユビキチンリガーゼの触媒活性部位に変異が認められること、大多数を占める孤発性疾患では酸化ストレスの一つである一酸化窒素(NO)が触媒領域のシステイン残基をS-ニトロシル化し,E3活性を著しく変化させることが報告されている。したがって、疾病発症に連関した異常蛋白質あるいは変性蛋白質の蓄積過程に、ユビキチン・プロテアソーム系におけるE3リガーゼの変異や酸化による機能消失が関与していることが強く示唆されている。そこで本研究では、小胞体膜に存在しているE3リガーゼの生理的あるいは病態生理的特徴を明らかにすることを目的としている。私たちが既に単離している新規小胞体膜存在ユビキチンリガーゼのシステイン残基に対して、NOがS-ニトロシル化するか否か種々の特異的方法にて検討する。また,その修飾が活性に対して影響をするか否か、in vitroあるいは細胞レベルで検証する。さらには、S-ニトロシル化の有無、部位の特定、自己ユビキチン化の影響など神経変性疾患発症に関わる病態生理学的検討を行う。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Uehara, T., Nakamura, T., Yao, D., Shi, Z.Q., Gu, Z., Ma, Y., Masliah, E., Nomura, Y., and Lipton, S.A. S-nitrosylated protein-disulfide isomerase links protein misfolding to neurodegeneration. Nature 441, 513-517. (2006).
  2. Omura, T., Kaneko, M., Orba, Y., Nagashima, K., Takahashi, R., Murahashi, K., Okuma, Y., Uehara, T., and Nomura, Y. A ubiquitin ligase HRD1 promotes the degradation of Pael receptor, a substrate of Parkin. J. Neurochem. 99, 1456-1469 (2006).
  3. Yao, D., Gu, Z., Nakamura, T., Shi, Z., Ma, Y., Gaston, B., Palmer, L.A., Rockenstein, E.M., Masliah, E., Uehara, T., and Lipton, S.A. Nitrosative stress linked to sporadic Pakinson’s disease: S-nitrosylation of Parkin regulates its E3 ligase activity. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 10810-10814. (2004).

ひと言!

蛋白質分解機構に対する酸化ストレスの影響を神経変性疾患発症との関係からアプローチすることを考えています。この特定領域研究を介して様々な面で共同研究を進めることができれば幸いです。

Web page

http://web.mac.com/takashi_uehara/iWeb/Site/Welcome.html

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