> サイトマップ

caspaseの細胞増殖および分化制御における本質的生理機能の解析

写真:米原伸

京都大学 大学院生命科学研究科
高次遺伝情報学分野 教授
米原 伸

我々が発見したdeath receptor Fasを介するアポトーシスでは、開始caspaseとしてcaspase-8が機能する。ヒトではcaspase-8の類似分子caspase-10も存在するが、マウスではcaspase-8しか存在しない。我々は、ヒトT細胞由来株、上皮細胞株、神経前駆細胞株において、レンチウイルスベクターを用いたTetRとshRNA発現システムによって、caspase-10とcaspase-8の特異的発現抑制を誘導する系を立ち上げた。その結果、驚くべきことにcaspase-10の発現を抑制したときにT細胞のみで細胞増殖の顕著な抑制とアポトーシスの誘導が認められた(caspase-8では認められない)。さらに、caspase-8の発現を抑制したときには、神経細胞への分化が強く抑制されることも明らかとなっている。また、マウスT細胞株ではcaspase-8の発現抑制で細胞増殖抑制とアポトーシスの誘導が認められた。次にcaspase-8の変異分子を用いてrescue実験を行った結果、caspase-8のプロテアーゼ活性が細胞増殖と生存に必要であるが、caspase-8前駆体(弱いprotease活性を有する)が切断して活性化型に変換する必要のないことが示された。このようなcaspaseの細胞増殖・分化に関わる機能の分子機構と生理機能の解明を今後進めていく予定である。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Yonehara S, Ishii A, and Yonehara M. 1989. A cell-killing monoclonal antibody (anti-Fas) to a cell surface antigen co-downregulated with the receptor of tumor necrosis factor. J Exp Med, 169, 1747-1756. (Fas発見の論文)
  2. Sakamaki K, Inoue T, Asano M, Sudo K, Kazama H, Sakagami J, Sakata S, Ozaki M, Nakamura S, Toyokuni S, Osumi N, Iwakura Y, and Yonehara S. 2002. Ex vivo whole-embryo culture of caspase-8-deficient embryos normalize their aberrant phenotypes in the developing neural tube and heart. Cell Death Differ, 9, 1196-1206.
    (caspase-8ノックアウトマウスの作製と解析)
  3. Okamoto K, Fujisawa J, Reth M, and Yonehara S. 2006. Human T-cell leukemia virus type I oncoprotein Tax inhibits Fas-mediated apoptosis by inducing cellular FLIP through activation of NF-κB. Genes Cells, 11, 177-191. (レンチウイルスベクターを用いた遺伝子発現系の構築)

ひと言!

caspaseがアポトーシスの実行以外に様々な生理機能(細胞増殖・分化)を有することを、みなさんに認識していただければと希望しています。

Web page

http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/labs/Fas/Home_j.htm

▲このページの先頭へ