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カルパインによる生体のモジュレーション

写真:反町洋之

財団法人東京都医学研究機構
東京都臨床医学総合研究所
カルパインプロジェクト
参事研究員
反町 洋之

カルパインは、細胞内で基質を特異的・限定的に切断するCa2+-要求性モジュレータ・プロテアーゼです。15の哺乳類カルパインのうち解析された7種で、変異が致死・病態を引き起こすため、正常な生命活動に必須な酵素といえます。カルパイン不全による疾患には筋ジストロフィーなどが含まれますが、カルパインの作用機序ついては生理的にも病態生理学的にもほとんど不明です。本研究ではカルパイン不全による生体システム破綻のメカニズムを解析し、カルパインが生体をモジュレートする分子機構の解明を目的とします。細胞内で多種の基質と共存するカルパインが、どのように時空間的選択性を実現するのかについて、主に組織特異的カルパインを中心に解析しています。骨格筋特異的カルパインp94/CAPN3は、自己分解活性の強いユニークなプロテアーゼで、活性不全が筋ジストロフィーを発症します。細胞質に加え筋原線維・SRにも存在し、骨格筋の恒常性維持を担います。また、胃腸に発現するnCL-2/CAPN8とnCL-4/CAPN9は胃腸の表層粘液細胞に限局し、粘膜形成の調節に関与します。細胞内膜輸送系に関与するβ-COPを限定分解するため、膜輸送系への関与が考えられます。遺伝子改変マウスを用いた多面的解析により、これらのカルパインの関与する生命現象の解明を目指します。一方、カルパインの基質特異性も未解明な点ばかりで、この点についてもプロテオーム的手法やバイオインフォマティックスを応用した新しいアプローチで、基質認識の原理に迫りたいと考えています。

本研究課題に関連する代表的論文3報

  1. Hayashi, C., Ono, Y., Doi, N., Kitamura, F., Tagami, M., Mineki, R., Arai, T., Taguchi, H., Yanagida, M., Hirner, S., Labeit, D., Labeit, S., and Sorimachi, H. (2008) Multiple molecular interactions implicate connectin/titin N2A region as a modulating scaffold for p94/calpain 3 activity in skeletal muscle. J. Biol. Chem., 283, 14801-14814.
  2. Hata, S., Doi, N., Kitamura, F., and Sorimachi, H. (2007) Stomach-specific calpain, nCL-2/calpain 8, is active without calpain regulatory subunit, and oligomerizes through C2-like domains. J. Biol. Chem. 282 :27847-27856.
  3. Ojima, K., Ono, Y., Doi, N., Yoshioka, K., Kawabata, Labeit, S., and Sorimachi, H. (2007) Myogenic stage, sarcomere length and protease activity modulate localization of muscle-specific calpain. J. Biol. Chem. 282:14493-14504.

ひと言!

今まで注目されてこなかったカルパインや他のプロテアーゼとの連携が今後ますます興味深いと思っています。ご興味のある方は是非コラボレーションをしましょう。

Web page

http://www.rinshoken.or.jp/ER/

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