PubMedID | 27693508 |
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タイトル | Systemic Analysis of Atg5-Null Mice Rescued from Neonatal Lethality by Transgenic ATG5 Expression in Neurons. |
ジャーナル | Dev Cell, 2016 Sep 28; [Epub ahead of print] |
著者 | Yoshii SR, Kuma A, Akashi T, Hara T, Yamamoto A, Kurikawa Y, Itakura E, Tsukamoto S, Shitara H, Eishi Y, Mizushima N |
- 神経特異的ATG5レスキューマウスを用いた全身網羅的解析
- Posted by 東京大学医学系研究科 久万亜紀子、吉井紗織
- 投稿日 2016/10/10
ノーベル賞受賞、おめでとうございます!!!
先日受理されました私たちの論文について紹介させて頂きます。
オートファジー遺伝子Atg5欠損マウスは外見ほぼ正常に生まれますが、生後1日で死亡します。このマウスは母乳を飲むことがきでないという異常(吸啜障害)がありますが、母乳を飲まない条件で比較しても正常マウスよりも早く死亡します。解析の結果、出生に伴うオートファジーが栄養供給(アミノ酸レベルの維持)に重要であることが分かりました(Kuma et al. Nature 2004)。しかし、Atg5欠損マウスの死因については不明のままでした。今回私たちは、Atg5欠損マウスが神経異常によって吸啜障害を呈している可能性を疑い、Atg5欠損マウスの神経細胞にのみAtg5遺伝子を再導入したマウスを作製しました(神経特異的ATG5レスキューマウス)。その結果、従来、生後1日で死亡したAtg5欠損マウスが成獣まで生存できるようになりました。よって、Atg5欠損マウスの新生仔期における死因は神経異常にあったことがわかりました。以前の研究結果と合わせて考えますと、Atg5欠損マウスは神経異常による吸啜障害のために飢餓状態が続き、かつ、出生に伴うオートファジーによる栄養供給もない、という2つの理由によって重篤な栄養不足状態となり、早期死亡に至ると考えられます。
この神経特異的ATG5レスキューマウスが新生仔期の死亡を回避して成獣まで育つことから、全身(神経以外)のAtg5欠損による影響を成獣で解析することが可能となりました。このマウスは体が小さく、肝臓や脾臓の肥大、骨格筋や脂肪組織の委縮、性腺委縮、様々な臓器における炎症などの異常が認められます。また、肝臓・心臓・骨格筋・膵臓において品質不良タンパク質の蓄積が著しいことがわかりました。さらに、このマウスは鉄吸収不全による貧血や性ホルモン低下を伴う性腺委縮を呈することが分かりました。この新しいマウスモデルから得られた知見は、今後、オートファジーの生理機能の理解に役立つことが期待されます。
裏話:著者名をみていただくとお分かりいただけますように、歴代の水島研在籍者の名前が連なっております。神経特異的ATG5レスキューマウス(ラボ通称:脳戻しマウス)の作製着手から10年近く経って、形となりました。吉井さんをはじめ、メンバーみんなの努力が実った論文です。