PubMedID 27818143
タイトル An Autophagic Flux Probe that Releases an Internal Control.
ジャーナル Mol Cell, 2016 Oct 25; [Epub ahead of print]
著者 Kaizuka T, Morishita H, Hama Y, Tsukamoto S, Matsui T, Toyota Y, Kodama A, Ishihara T, Mizushima T, Mizushima N
  • オートファジーの活性を簡便かつ定量的に測定できる新規プローブの開発
  • Posted by 東京大学 医学系研究科 分子生物学分野  森下 英晃
  • 投稿日 2016/11/08

 最近受理されました私たちの論文を紹介させて頂きます。本研究は共著者の貝塚剛志博士(理化学研究所)、塚本智史博士(放射線医学総合研究所)らと共同で行ったものです。

 オートファジーの分子機構や生理・病態生理学的意義を研究するうえで、オートファジー活性の定量的な測定法の存在は非常に重要となります。これまでオートファジーの活性を測定する方法が種々報告されてきましたが、熟練を要するものや、2種の細胞の比較を要するなど、簡便さ、感度、特異性などにまだ課題が残っているのが現状です。さらにモデル動物でのオートファジー活性測定は非常に困難でした。

 今回、私たちは簡便かつ定量的にオートファジー活性を測定できる新規プローブとしてGFP-LC3-RFP-LC3ΔGを開発しました。本プローブは細胞内で合成されると直ちにATG4によって切断され、GFP-LC3とRFP-LC3ΔGを一対一の量比で生成します。GFP-LC3は細胞質中では緑色の蛍光を発しますが、オートファゴソーム膜に局在化してリソソームに運ばれると蛍光を発しなくなります。一方、RFP-LC3ΔGはオートファゴソーム膜への局在化に必要な末端のグリシン(G)を欠くため細胞内に留まり、プローブの発現量を反映する内部標準となります。したがって、GFPとRFPの蛍光強度の比が、オートファジー活性の指標となります。例えばGFP/RFP比が低いほど、オートファジー活性が高いことを示唆します。

 本プローブは培養細胞だけでなくマウスやゼブラフィッシュなどの動物個体内でも使用できることが大きな特徴です。これまでマウス受精卵でオートファジーが活性化することが知られていましたが、今回本プローブを用いてそれを確認するとともに、ゼブラフィッシュの受精卵でもオートファジーが活性化することを初めて示しました。また個体内の特定の細胞や組織(水晶体や白筋など)では高いオートファジー活性を認めることも見出しました。さらに株式会社LTTバイオファーマとの共同で、同社が独自に構築した1054種類の既承認薬ライブラリー(日本とアメリカで市販されている医薬品だけを集めた化合物ライブラリー)を用いてスクリーニングを行い、新規オートファジー誘導薬・阻害薬を同定しました。

 今後、本プローブの利用によってオートファジーの基礎研究や疾患研究が進展することが期待されます。