PubMedID 29789439
タイトル Autophagosomal YKT6 is required for fusion with lysosomes independently of syntaxin 17.
ジャーナル J Cell Biol, 2018 May 22; [Epub ahead of print]
著者 Matsui T, Jiang P, Nakano S, Sakamaki Y, Yamamoto H, Mizushima N
  • 第2のオートファゴソームSNARE
  • Posted by 東北大院・生命科学研究科 松井貴英
  • 投稿日 2018/05/31

 最近アクセプトされました、私の以前の所属研究室(東大院・医学系研究科・水島研)での報告を紹介します。
 水島研ではこれまでに、オートファゴソームに局在し、オートファゴソームとリソソームの融合過程を制御するSNAREとしてSyntaxin 17 (STX17)を同定しています(Itakura E et al. Cell. 2012 Dec 7;151(6):1256-69. doi: 10.1016/j.cell.2012.11.001.)。
 本論文ではまず、CRISPR/Cas9システムを用いてSTX17ノックアウト細胞を作製し、その表現型解析を行いました。その結果、siRNAでSTX17をノックダウンした細胞と比較して、STX17をノックアウトした細胞ではオートファゴソームとリソソームの融合阻害が軽度であることがわかりました。
 そこで我々は、STX17非依存的にオートファゴソームとリソソームの融合を制御する第2のオートファゴソームSNAREが存在すると推測し、ヒトに保存されている全てのSNARE分子を対象にスクリーニングを行ったところ、YKT6を同定することに成功しました。
 YKT6は隔離膜には局在せず、オートファゴソームに局在しました。さらにYKT6のノックダウンは、野生型細胞では部分的に、STX17 KO細胞では完全にオートファゴソームとリソソームの融合過程を阻害することがわかりました。
 以上から、STX17とYKT6が互いに非依存的にオートファゴソームとリソソームの融合過程を制御していることが明らかとなりました。
 ほぼ同時期に、ショウジョウバエにおいてもYKT6がオートファゴソームとリソソームの融合過程に関与していることが報告されました(Takáts S et al. PLoS Genet. 2018 Apr 25;14(4):e1007359. doi: 10.1371/journal.pgen.1007359.)。我々のモデルと少し異なる部分もありますが、YKT6がオートファゴソームとリソソームの融合過程に関与していることは進化的に保存されている可能性が高いと考えられます。
 今後は、なぜオートファゴソームとリソソームの融合に異なるオートファゴソームSNAREが必要なのか、どのようなメカニズムでYKT6やSTX17が選択的にオートファゴソームに局在できるのか、などの疑問が明らかになっていけばと考えています。