PubMedID | 23940117 |
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タイトル | Atg18 phosphoregulation controls organellar dynamics by modulating its phosphoinositide-binding activity. |
ジャーナル | J Cell Biol, 2013 Aug 19;202(4);685-98, |
著者 | Tamura N, Oku M, Ito M, Noda NN, Inagaki F, Sakai Y |
- Atg18 のリン酸化による脂質結合能の調節と液胞動態の制御機構
- Posted by 京都大学 農学研究科 応用生命科学専攻 田村直輝・阪井康能
- 投稿日 2013/08/21
丁度、Journal of Cell Biology 最新号に掲載された我々の論文を紹介いたします。
Atg18 はオートファジーに必須な分子で、そのN末端に7枚のβプロペラからなる脂質結合ドメインをもつPROPPIN familyに属します。PROPPINはイノシトールリン脂質(PI)に結合し、昨年、Kluyveromyces 属酵母 Hsv2の構造が明らかにされました。Atg18はオートファジーに関わる一方で、PI(3,5)P2のエフェクター分子として高浸透圧環境における液胞の分裂を制御しています。メタノール資化性酵母Pichia pastorisのミクロペキソファジー(ミクロオートファジー)には、液胞の分裂とphagophoreの一種であるMIPA (micropexophagy-specific membrane apparatus)形成の両方に関わっていることが予想されましたが、どのようにしてAtg18がこれらの独立した機能を担っているのか、わかっていませんでした。
我々はPpAtg18がリン酸化されることを見出し、PI結合実験からリン酸化がPpAtg18のPI(3,5)P2への結合を負に調節していることを明らかにしました。PpAtg18ではPROPPINのPI結合部位の近傍に位置する二つの部位がリン酸化されていました。特にβプロペラ5枚目と6枚目の間にあるloop構造は、PROPPINの膜結合に重要で、哺乳類Atg18ホモログであるWIPI1~4を含む全てのPROPPIN familyに保存されています(Baskaran et al. (2012) Mol. Cell)。in vivo では、PpAtg18のリン酸化レベルは高浸透圧条件など、液胞が出芽する時に減少して液胞膜に局在、融合時にはリン酸化され液胞膜から遊離しました。このようにPpAtg18では、PI(3,5)P2への結合能を自身のリン酸化により調節することで液胞の動態を制御しているということがわかりました。さらにミクロペキソファジーでは、Atg18のリン酸化/脱リン酸化の量比が液胞とphagophoreへのAtg18の局在量を調節し、両膜構造体形成のバランスをとっています。マクロオートファジーではAtg18はリン酸化され、液胞から離れることにより間接的にマクロオートファジーを正に制御していることになります。一般に、PIシグナルに重要なPI結合タンパク質の生体膜への回収は、PIのリン酸化 /脱リン酸化による膜上でのの調節が主なものと考えられてきましたが、生体膜側でなく、タンパク質のリン酸化によるPI結合能の調節が重要な役割を果たす実例を示すことができたと考えています。