PubMedID 30911189
タイトル Atg2 mediates direct lipid transfer between membranes for autophagosome formation.
ジャーナル Nat Struct Mol Biol, 2019 Mar 25; [Epub ahead of print]
著者 Osawa T, Kotani T, Kawaoka T, Hirata E, Suzuki K, Nakatogawa H, Ohsumi Y, Noda NN
  • Atg2は脂質を輸送する
  • Posted by 公益財団法人 微生物化学研究会  大澤拓生
  • 投稿日 2019/03/31

最近発表した私達の論文について紹介させていただきます。
出芽酵母において、Atg2はAtg18と複合体を形成することで伸張中の隔離膜先端に局在します。同時に、Atg2はER exit site (ERES)とも接触していますが、この特徴的局在の生理的な意味は理解されていませんでした。そこで、オートファジーにおけるAtg2の役割を知るために、Atg2の結晶構造に基づいたin vitroでの機能解析を行ったところ、Atg2は曲率の高い膜間を繋留し、繋留した膜間で脂質輸送を行うことが明らかとなりました。また、脂質輸送活性を失ったAtg2変異体の細胞内局在および他因子との相互作用は、野生型と同じであるにも関わらず、そのAtg2変異体を発現させた細胞はオートファジー活性を示さないことから、Atg2の脂質輸送活性がオートファジーに必要不可欠であることが示唆されました。以上の結果から、Atg2は伸張中の隔離膜先端とERESを繋留し、ERから隔離膜への脂質供給を直接的に媒介していると考えられます。また、オートファゴソームが膜タンパク質をほとんど含まないのは、Atg2が脂質のみを隔離膜へと輸送している結果だと考えられます。
Atg2の結晶構造を決定したのが数年前で、構造決定から時をそれほど置かずしてAtg2の脂質輸送活性も確認していました。脂質輸送の分子機構を完全に明らかにしてから話をまとめようと考えていたところ、昨年のVps13の脂質輸送に関する報告が、我々の研究内容に間接的に触れてしまった為、不本意な形での発表となってしまいました。今回明らかにしたAtg2の機能は、隔離膜伸張機構やオートファゴソーム膜の起源に関する部分においても重要な示唆を含んでいますが、それらを明確にする上でも、より詳細なAtg2の構造機能解析が期待されます。