PubMedID 32492081
タイトル ERdj8 governs the size of autophagosomes during the formation process.
ジャーナル J Cell Biol, 2020 Aug 03;219(8);
著者 Yamamoto YH, Kasai A, Omori H, Takino T, Sugihara M, Umemoto T, Hamasaki M, Hatta T, Natsume T, Morimoto RI, Arai R, Waguri S, Sato M, Sato K, Bar-Nun S, Yoshimori T, Noda T, Nagata K
  • ERdj8はオートファゴソームの大きさを調節する
  • Posted by 大阪大学大学院歯学研究科  山本洋平
  • 投稿日 2020/06/16

最近発表した我々の論文についてご報告させて頂きます。

この度、我々はオートファゴソームのサイズ調節に関わる新規の小胞体膜タンパク質であるERdj8/DNAJC16を同定しました。小胞体に局在するERdjタンパク質ファミリーは分泌タンパク質や膜タンパク質のフォールディングや分解、カルシウムの貯蔵など小胞体で起こる重要な生命現象の制御に関わることが明らかになっています。また近年、顕微鏡技術の飛躍的な進歩により、小胞体ネットワーク上において、一様にタンパク質が分布しているのではなく特異的な領域に個々のタンパク質が分布し、サブドメイン(小胞体サブドメイン)を形成し、機能することが報告されています。超解像顕微鏡を用いてERdj8の詳細な細胞内局在を解析した結果ERdj8は小胞体膜上で、Sec61βとは異なる領域に強く集積し小胞体ネットワーク上でサブドメインを形成していることが明らかになりました。最近、オートファゴソームの形成においても小胞体サブドメインが重要な働きをしていることが報告されており興味深いことに、このERdj8陽性小胞体サブドメインにはULK1複合体やATG14などのオートファジー関連因子および、リン脂質合成酵素であるPISの一部が共局在することが観察されました。これらを踏まえ、ERdj8とオートファジーの関係を調べた結果、ERdj8の過剰発現またはノックダウンを行ったところ、オートファゴソームの大きさがその発現量に依存して変化することが明らかになりました。また、ERdj8ノックダウン条件下において、ミトコンドリアや3 μmラテックスビーズなどの大型のオートファジー基質の分解は促進されず、一方でp62や1 μmラテックスビーズなどの小型のオートファジー基質の分解には影響がでませんでした。さらに、ERdj8は酵母には存在せず、高等真核生物に保存されていることから、線虫のERdj8ホモログであるdnj-8のノックダウンを行い、培養細胞と同様に筋肉細胞に発現するミトコンドリアと小型オートファジー基質として知られる父性ミトコンドリアに対する影響を確認しました。その結果、筋肉細胞中のミトコンドリアの分解は阻害されたのに対し、父性ミトコンドリアの分解には影響を及ぼしませんでした。これらの結果は生物種間を超えERdj8の欠損条件下において、オートファゴソーム膜の機能(性質)に対して影響は及ぼさず、オートファゴソームの膜の供給過程に影響を及ぼすことを強く示唆しています。この論文ではERdj8がどのようなメカニズムでオートファゴソームの大きさの制御過程に関わっているのか明らかになっていません。しかしERdj8の機能ドメインは小胞体の内腔側に存在し、その機能ドメイン変異体はオートファゴソームの大きさに影響を与えないことから、小胞体内腔環境がオートファゴソームの大きさ制御に重要な役割を担うことが予想されます。また、近年Atg2を介したオートファゴソーム膜へ脂質の供給やPISなどのリン脂質合成酵素とオートファゴソーム形成へ関与が報告されています。今後はそれらとERdj8の関係をさらに解析することで、オートファゴソームの大きさ制御のメカニズムを明らかにしていきたいと思います。