PubMedID 34000301
タイトル Genome-wide CRISPR screening reveals nucleotide synthesis negatively regulates autophagy.
ジャーナル The Journal of biological chemistry 2021 May;100780.
著者 Mimura K, Sakamaki JI, Morishita H, Kawazu M, Mano H, Mizushima N
  • 核酸合成はオートファジーを負に制御する
  • Posted by 東京大学大学院 医学系研究科 三村 海渡
  • 投稿日 2021/05/20

初めての投稿ですがよろしくお願いします。最近発表しました我々の論文を紹介させていただきます。今回我々は細胞のプリン、ピリミジン塩基合成がオートファジーを負に制御することを見出し、そのメカニズムの一端を解析しました。

我々はオートファジーの抑制因子を検索するべく、オートファジー活性を定量化できるGFP-LC3-RFPレポーターを使ってゲノムワイドCRISPRスクリーニングを行いました。その結果、プリンのde novo合成経路の1因子であるPFASという酵素の欠損でオートファジーが誘導されることがわかりました。
PFASノックアウト細胞を解析すると、細胞外からのプリン供給が得られない透析血清入りの培地で培養すると強くオートファジーが誘導されることがわかりました。これは細胞内のプリン濃度の低下(プリン飢餓状態)によるものと考えられました。
次に我々はその上流因子を調べました。まず、プリン飢餓条件では細胞のmTORC1活性が低下していました。また、TSC2のノックアウト細胞ではプリン飢餓状態でオートファジーの誘導がほとんど起きませんでした。このことから、プリン飢餓状態におけるオートファジーの活性化はTSC-RHEB-mTORC1のシグナリングに依存していると考えられました。
関連して、ピリミジン合成酵素をノックアウトしたところ、ピリミジン合成経路を構成するCADまたはDHODHのノックアウト細胞においてもオートファジーが活性化するが、mTORC1の活性が低下していないことがわかりました。これにより、プリン欠乏とピリミジン欠乏とでは別個のオートファジー誘導経路が働いていると推測されます。
核酸欠乏はメトトレキサートや5-フルオロウラシルなどの代謝拮抗薬の投与下で起き得ると考えられ、本研究は腫瘍細胞でのオートファジー活性を考察する上で重要となる可能性があると考えています。今後は、プリン飢餓状態でのTSC2の上流がどのようになっているのか、ピリミジンの欠乏がどのようにしてオートファジーを活性化するかを明らかにできればと考えています。

本研究は、私が学部生として水島研に通い、おおむね大学5,6年にかけて取り組んだ研究課題です。最後の方は医師国家試験に向けて勉強をしながら実験する日々で、大学卒業までにリバイスの実験が間に合い、立つ鳥跡を濁さずと言ったところでしょうか(というのは冗談で、まだまだ色々とご迷惑をおかけしていますが)。研究を進めていくにあたって水島さん、森下さん、坂巻さんに非常にお世話になりました。好きなだけ実験をできる環境や、科学者として成長する機会を与えてくださったことに非常に感謝しています。

本研究は国立がんセンター細胞情報学分野の間野博行博士、河津正人博士と共同で行いました。