PubMedID 34239122
タイトル Membrane perturbation by lipidated Atg8 underlies autophagosome biogenesis.
ジャーナル Nature structural & molecular biology 2021 Jul;.
著者 Maruyama T, Alam JM, Fukuda T, Kageyama S, Kirisako H, Ishii Y, Shimada I, Ohsumi Y, Komatsu M, Kanki T, Nakatogawa H, Noda NN
  • 脂質化Atg8は膜摂動活性をもつ
  • Posted by 微生物化学研究会微生物化学研究所 丸山 達朗
  • 投稿日 2021/07/10

最近、私たちが発表した脂質化Atg8に関する論文を紹介させていただきます。
Atg8はAtg12結合系およびAtg8結合系の働きによって脂質化されて、オートファゴソームの形成に働きます。この脂質化反応は試験管内で再構成することができますが、これまでに脂質化Atg8が膜構造に与える影響とそのメカニズムは分かっていませんでした。試験管内再構成では通常、球状のリポソームが用いられますが、隔離膜が非球状であることから、本研究では扁長(非球形)のリポソームを用いました。マイクロピペットを使ってリアルタイムで観察すると、脂質化Atg8の形成に伴って扁長のリポソームがくびれて、互いに連結した二つの球状のリポソームへと劇的に変形しました。このようなリポソームの変形は、Atg8を化学反応で脂質に結合させても起きませんでした。そこで脂質化反応(酵素反応)で作られた脂質化Atg8の状態を溶液NMR法で調べると、脂質化Atg8は、レセプター認識に重要なAIM(LIR)結合部位を溶媒側に、ユビキチン様ドメインのC末端付近を脂質膜側に向けた、特定の配向を取っていることが分かりました。この構造を参考にして、脂質膜の近傍に位置していたフェニルアラニンを変異すると、上述したリポソームの変形が阻害され、出芽酵母ではオートファゴソームの数が減少しサイズが小さくなりました。哺乳細胞ではp62のクリアランスが低下し、Atg8の上記のフェニルアラニンの重要性は保存されていました。また、脂質化に依存しませんが、ストレス時の液胞膜形態の維持にも重要でした。以上の結果から、脂質化Atg8はオートファジーに重要な膜摂動活性をもっており、膜上における脂質化Atg8の役割を構造基盤とともに明らかにできたと考えています。
この研究を進めていく中で、リポソームは球状だけでなく、作り方によって色々な変な形のものができることを知りました。ただ、そういった変な形のリポソームを探すのは大変で、リポソームを蛍光標識していなかったこともあって、ぼんやりとノイズのように見えるリポソームの中から丁度良いものを見つけるのに苦労してしまいました。
本研究は、多くの先生方にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。