PubMedID 34351902
タイトル Rubicon prevents autophagic degradation of GATA4 to promote Sertoli cell function.
ジャーナル PLoS genetics 2021 Aug;17(8):e1009688.
著者 Yamamuro T, Nakamura S, Yamano Y, Endo T, Yanagawa K, Tokumura A, Matsumura T, Kobayashi K, Mori H, Enokidani Y, Yoshida G, Imoto H, Kawabata T, Hamasaki M, Kuma A, Kuribayashi S, Takezawa K, Okada Y, Ozawa M, Fukuhara S, Shinohara T, Ikawa M, Yoshimori T
  • Rubiconはセルトリ細胞の機能を維持する
  • Posted by 大阪大学医学系研究科/生命機能研究科 山室 禎
  • 投稿日 2021/08/17

最近、PLOS Genetics誌に掲載された当研究室の論文を紹介させていただきます。
精巣では精原幹細胞から次第に分化が進み、最終的に精子が形成されます。セルトリ細胞はその生殖細胞群を物理的に支持し、様々なサイトカインを分泌することで精子形成に寄与しています。生殖細胞やセルトリ細胞のオートファジーが精子形成に必須であることは示されていましたが、オートファジーがどのように働き、制御されて精子形成に関わるのかは未解明でした。
私たちは初めに、オートファジーの負の制御因子であるRubiconを全身で欠損したマウスでは、精巣重量が低下することを見出しました。このマウスの精巣では精子が一部枯渇しており、Rubiconが正常な精子形成に必要であると考えられました。続いて遺伝子発現を解析したところ、このマウスではセルトリ細胞に特異的な遺伝子の発現が顕著に低下していることが分かりました。一方で、ライディッヒ細胞や生殖細胞に特異的な遺伝子の発現は変化していませんでした。そのため、セルトリ細胞特異的なRubicon欠損マウスを作成しました。このマウスは全身欠損マウスと同様に、精巣重量や精子形成の低下を示しました。このことから、セルトリ細胞のRubiconが精子形成に重要であると考えられました。さらに、Rubiconを抑制すると、セルトリ細胞の機能に必須な転写因子であるGATA4がオートファジーによって分解されることがわかりました。また、抗アンドロゲン薬を処理するとRubiconが減少し、オートファジーが亢進すること、同時にGATA4も減少することが判明しました。これらの結果から、アンドロゲンがRubiconを介してGATA4のオートファジー分解を調節し、セルトリ細胞の機能を制御している可能性があると考えています。
この研究は大阪大学微生物病研究所の伊川先生、遠藤先生を初め、泌尿器科学の福原先生、栗林先生、京都大学の篠原先生、多くの先生方のご協力で進めることができました。この場をお借りして心より御礼申し上げます。