PubMedID 34330656
タイトル Autophagy balances the zinc-iron seesaw caused by Zn-stress.
ジャーナル Trends in plant science 2021 Sep;26(9):882-884.
著者 Shinozaki D, Yoshimoto K
  • 植物オートファジーは亜鉛欠乏・過剰ストレス下で、異なる金属の供給機構としてはたらく
  • Posted by 明治大学・農学部・生命科学科 篠崎大樹
  • 投稿日 2021/08/18

明治大学の環境応答生物学研究室で、植物オートファジーの研究をしております、博士後期課程2年の篠崎大樹と申します。この度、植物の亜鉛ストレス応答におけるオートファジーの役割をまとめた総説を、植物科学総説専門の著名ジャーナルである「Trends in Plant Science」に発表しましたので紹介させていただきます。本総説では、私たちがこれまでに明らかにしてきた、亜鉛欠乏と過剰応答におけるオートファジーの役割を軸に、新たな植物体内金属恒常性維持モデルを提唱しました。
 土壌から植物体内への金属の吸収に関わるトランスポーターは、亜鉛と鉄の両方の吸収に関与します。土壌中のこれらの金属濃度が適切な場合、植物は亜鉛と鉄を適切なバランスで吸収することができます。一方で、亜鉛欠乏時には鉄の吸収量が増加し、また、亜鉛過剰時には鉄の吸収量が減少することにより、植物体内の亜鉛-鉄バランスが崩れ、生理障害が発生します。
 私たちは以前、亜鉛欠乏時にオートファジーが誘導され、遊離の亜鉛が供給されることで、亜鉛の生物学的利用能が向上、亜鉛欠乏症状が抑制されることを報告しました(Shinozaki et al., 2020, Plant Physiol.)。また、亜鉛過剰時においてもオートファジーが誘導され、生理障害が抑制されることを見出しました。更なる解析の結果、亜鉛過剰時のオートファジーは遊離鉄の供給機構として機能していることを明らかにしました(Shinozaki et al., 2021, Plant Cell Physiol.)。
 以上より、オートファジーは亜鉛欠乏と過剰時にそれぞれ、亜鉛および鉄の供給機構として機能し、吸収特性により崩壊してしまう生体内亜鉛-鉄シーソーのバランスを矯正することで、幅広い亜鉛濃度環境への適応を可能にしていると指摘できます。本報告により、主に吸収と輸送に注目して展開されてきた植物体内金属恒常性維持研究に、生体内リサイクルという新たな一石を投じることができたと思います。
 また、本件に関するプレスリリースを発行しておりますので、ご参照頂けますと幸いです。
日本語版:https://www.meiji.ac.jp/koho/press/6t5h7p00003chqww.html
English version press release:https://www.meiji.ac.jp/cip/english/news/2021/autophagy.html
紹介動画 (Movie):https://www.youtube.com/watch?v=TrHISGHQDKk