PubMedID 33674420
タイトル OTTER, a new method quantifying absolute amounts of tRNAs.
ジャーナル RNA (New York, N.Y.) 2021 Mar;.
著者 Nagai A, Mori K, Shiomi Y, Yoshihisa T
  • OTTER, a new method quantifying absolute amounts of tRNAs
  • Posted by 兵庫県立大学大学院理学研究科 吉久 徹
  • 投稿日 2021/08/31

 正しくproteomeが形成されるためには、各mRNAにおける正しいコドン選択に加えて、各aminoacyl-tRNAの適切な量の調整が必要です。RNA量の解析にはmicroarrayやRNA-Seqが利用されますが、これら網羅的手法では、各tRNA種の環境や発生状態の違いでの量的変化は追えるものの、強固な2次構造を持ち、多くの修飾ヌクレオチドを含むtRNAでは、種毎にシグナル形成効率が異なるためtRNA種間の量を正確に比較することが困難でした。我々は、蛍光標識ヌクレオチドを利用したreverse primer extension法をtRNAに対して至適化したOTTER法(Oligonucleotide-directed Three-prime Terminal Extension of RNA)を開発し、tRNAの絶対定量を可能にしました。我々はOTTER法を出芽酵母に適用し、富栄養発酵培地中で培養した酵母細胞では、各tRNA種は1 µg RNAあたり0.030〜0.73 pmol存在すること、その量は生理的な培養条件の違いで、数倍変化することを明らかにしました。

 OTTER法の開発自身は直接オートファジー研究とはつながりませんが、これを酵母に応用する中で、オートファジーが亢進する定常期において、全RNAに対するtRNAの割合が増加すること、また、この際tRNA種毎に増加率が違うことを報告しています。定常期では各種RNAの転写(供給)が低下し、tRNAレパートリーの形成には分解の影響が大きいことから、本論文での成果が我々がオートファジー研究をスタートするきっかけとなりました。