PubMedID 35282767
タイトル Loss of RUBCN/rubicon in adipocytes mediates the upregulation of autophagy to promote the fasting response.
ジャーナル Autophagy 2022 Mar;1-11.
著者 Yamamuro T, Nakamura S, Yanagawa K, Tokumura A, Kawabata T, Fukuhara A, Teranishi H, Hamasaki M, Shimomura I, Yoshimori T
  • 脂肪細胞のRubiconは飢餓時の応答を介在する
  • Posted by 大阪大学大学院医学系研究科 (現所属: BIDMC) 山室 禎
  • 投稿日 2022/03/20

最近、Autophagy誌に掲載された当研究室の論文を紹介させていただきます。生体における飢餓に対する反応での脂肪細胞オートファジーの役割を明らかにしました。
普段、脂肪細胞は余剰な栄養を中性脂肪として脂肪滴に貯蔵しています。飢餓になると脂肪細胞は中性脂肪を放出し、その中性脂肪は肝臓に取り込まれ、ケトン体産生に用いられることが分かっています。しかしながら、飢餓時の脂肪細胞における反応のメカニズムは、十分に理解されていませんでした。
私たちは以前、老化脂肪細胞ではオートファジーが過剰になり、脂肪肝の一因になることを見出していました (T Yamamuro et al., Nat. Commun., 2020)。今回我々は、オートファジーの負の制御因子であるRubiconが飢餓時においても減少し、オートファジーが活性化することを見出しました。飢餓時にコントロールマウスは脂肪萎縮を呈しますが、脂肪細胞特異的Rubiconノックアウトマウスは飢餓にしなくても脂肪組織量が同程度に減少していました。逆に、脂肪細胞特異的Atg5ノックアウトマウスでは、飢餓時の脂肪萎縮が軽減されていました。飢餓時のAtg5ノックアウトマウスでは、肝臓での脂肪蓄積とケトン体産生も低減されていました。これらの結果から、飢餓時の一連の反応 (脂肪萎縮、肝脂肪症とケトン体産生)には、脂肪細胞でのオートファジー活性化が重要であると考えました。また、飢餓時の脂肪細胞においては、SRC-1 (NCOA1)とTIF2 (NCOA2)が分解されており、それによって脂肪細胞機能が低下していることがわかりました。さらに、Rubiconもオートファジーの基質であり、mTORC1の不活性化に引き続いてRubiconの分解・減少が起こることも明らかになりました。Rubiconの分解は、オートファジー活性化のfeedforward機構として働いている可能性があります。以前の報告を踏まえて、老化や飢餓においてまずmTORC1が不活性化し、オートファジーの活性化・Rubiconの減少を介して脂肪細胞機能の低下が起こると考えています。
この研究は大阪大学内分泌代謝内科学の下村先生、福原先生のご協力があり、進めることができました。また、論文化にあたり、現所属先の梶村先生にも多大なご配慮をいただきました。この場をお借りして心より御礼申し上げます。