PubMedID 35319746
タイトル A Drosophila toolkit for HA-tagged proteins unveils a block in autophagy flux in the last instar larval fat body.
ジャーナル Development (Cambridge, England) 2022 Mar;149(6):.
著者 Murakawa T, Nakamura T, Kawaguchi K, Murayama F, Zhao N, Stasevich TJ, Kimura H, Fujita N
  • ショウジョウバエ幼虫最後期の脂肪体ではオートファジーは抑えられる
  • Posted by 東京工業大学生命理工学院 村川 直柔
  • 投稿日 2022/03/29

 先日、Development誌に掲載された私たちの論文を紹介させていただきます。ショウジョウバエの脂肪体は哺乳類の脂肪組織と肝臓の機能を併せ持つ器官であり、脂質、糖、アミノ酸などのエネルギー源の貯蔵と供給に働きます。脂肪体では、個体が飢餓状態に置かれた時だけでなく、体液中の変態ホルモンの濃度が急激に上昇する幼虫最後期にも脂肪体内にオートファジー関連構造体が多数観察されることがこれまでに報告されていました。飢餓によりオートファジーが誘導された場合は、直径1 um程度のオートリソソームが形成されますが、変態ホルモンが作用する幼虫最後期には、直径6 umにもなる肥大化したオートリソソームが見られます。これらの知見から、変態ホルモンによりオートファジーが過剰に亢進しているのではないかと考えられていましたが、その実体は良くわかっていませんでした。

 まずはじめに、HAタグに対する一本鎖抗体であるFrankenbodyにGFPとmCherryをタンデムにつないだコンストラクトにより、任意のHAタグ付きのタンパク質のオートファジーによる分解をショウジョウバエの生細胞で観察できる新たなシステムを構築しました。本システムを用いて、様々なHAタグ付きのタンパク質のオートファジーによる分解を観察したところ、飢餓処理によりオートファジーを誘導した場合には、Frankenbody-GFP-mCherryがリソソームへ輸送され、酸性条件下でGFPが消光しました。一方で、幼虫最後期の脂肪体では、肥大化したオートリソソームの内部でもGFPが発光する様子が観察されました。オートリソソームの性状解析の結果、幼虫最後期の脂肪体で見られる肥大化したオートリソソームでは、飢餓時のオートリソソームと比べて、pHの上昇と分解活性の低下が見られました。つまり、幼虫最後期の脂肪体では、オートファジーの亢進ではなく、分解活性の低下により、リソソームが肥大化していることが示されました。また、オートリソソームの肥大化には、オートファジーよりもエンドサイトーシス経路の寄与が大きいことも明らかにしました。

 最後に、リソソームの分解活性の低下が生物学的な意義をもつかどうか調べるため、少し荒っぽい実験ではありますが、TFEBのハエホモログであるmitfを幼虫最後期の脂肪体に過剰発現させ、リソソームの強制的な活性化を試みました。mitfを過剰発現させると、オートリソソームのpHは低下し、オートリソソームの肥大化も抑えられました。さらに、mitfを幼虫最後期に過剰発現した個体は、蛹期の初期に致死になることから、幼虫最後期の脂肪体で見られるリソソーム活性の低下は、蛹の正常な発生に重要であることが示唆されました。肥大化したオートリソソームは、蛹期に急速に消失することから、肥大化したオートリソソームは、蛹期の擬似的な飢餓にむけて、栄養源、特にアミノ酸、の貯蔵庫として機能しているのではないかと考えています。

今回の論文では明らかにできませんでしたが、今後は、変態ホルモンの作用により脂肪体のリソソーム活性が抑えられるメカニズムの詳細を明らかにしてきたいと考えています。