PubMedID 35306710
タイトル Autophagy triggered by iron mediated ER stress is an important stress response to the early phase of Pi starvation in plants.
ジャーナル The Plant journal : for cell and molecular biology 2022 Mar;.
著者 Yoshitake Y, Shinozaki D, Yoshimoto K
  • ER-phagyは早期リン酸欠乏時のリン酸リサイクルに関与する
  • Posted by 明治大学 農学部 生命科学科 吉竹 悠宇志
  • 投稿日 2022/04/01

明治大学農学部 吉本研究室の助教・吉竹悠宇志と申します。今回 、The Plant Journal誌に掲載された私たちの研究を紹介させて頂きます。本研究では、植物の生育に不可欠な栄養素であるリン酸の欠乏早期段階において、オートファジーによる小胞体分解 (以下ER-phagyと記します) がリン酸リサイクルに関与することを明らかにし、従来知られていた植物のリン酸欠乏応答機構よりも早い段階で機能する“早期リン酸欠乏応答機構”を提唱しました。
これまで、植物がリン酸欠乏に晒された際には、核酸や生体膜を構成するリン脂質が分解酵素によって分解され、そこに含まれるリン酸が細胞内にリサイクルされることが知られていました。本研究では、オートファジーがリン酸リサイクルに関与するのか解析を行いました。
リン酸欠乏下で8日間生育させたatg2およびatg5ノックアウト(atg変異体)は野生株に比べて著しく生育が抑制されていましたが、葉内のリン酸含量に差は見られませんでした。しかし、リン酸欠乏培地に移植後、経時的に葉内のリン酸含量を測定したところ、リン酸欠乏症が表在化する前の早期リン酸欠乏時においてatg変異体のリン酸含量が野生株よりも低くなっていました。このことから、植物オートファジーは、これまで知られていたリン酸欠乏応答機構が誘導されるよりも早いタイミングでのリン酸リサイクルに関与することが示されました。
さらなる解析の結果、早期リン酸欠乏時には鉄を介した過酸化脂質の蓄積が小胞体ストレスを引き起こしており、その小胞体ストレスがER-phagyを誘導していることが明らかとなりました。また、このER-phagyはこれまで知られていた後期リン酸欠乏応答機構を抑制していることも分かりました。このことから、植物は早期および後期のリン酸欠乏応答機構を使い分けることで、自然界の時空間的に不均一なリン酸濃度に適応していると考えられます。
論文をまとめるにあたりお世話になりました方々にこの場を借りてお礼申し上げます。また、本件に関するプレスリリースを発行しておりますので、ご参照いただけますと幸いです。
<プレスリリースのURL>
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/6t5h7p00003fecm6.html
https://www.atpress.ne.jp/news/304762
https://www.meiji.ac.jp/cip/english/