PubMedID 35427200
タイトル Evolutionary diversification of the autophagy-related ubiquitin-like conjugation systems.
ジャーナル Autophagy 2022 Apr;1-16.
著者 Zhang S, Yazaki E, Sakamoto H, Yamamoto H, Mizushima N
  • Evolutionary diversification of the autophagy-related ubiquitin-like conjugation systems
  • Posted by 東京大学医学系研究科分子生物学分野 Sidi Zhang
  • 投稿日 2022/04/23

最近、Autophagyに掲載された私たちの論文を紹介させていただきます。

オートファゴソームの形成には、二つのユビキチン様結合系(ATG8とATG12結合系)が重要です。ATG12結合系では、ATG12とATG5が共有結合することが必要とされていましたが、一部の生物(アピコンプレックス門原虫やコマガタエラ酵母)ではATG12とATG5の非共有結合性複合体が同じ役割を果たすことを、私たちは以前報告しました。そこで、ATG結合系のさらなる多様性について解析しました。

多くの真核生物は非モデル生物であるため、基準となるゲノムやゲノムアノテーションの情報が不十分です。そこで私たちは、真核生物の多様性を代表する94種の生物が含まれるトランスクリプトームデータベースを作成し、網羅的に相同タンパク質を同定しアノテーションする方法を確立しました。この方法を用いてATG結合系のタンパク質を調べたところ、ATG12とATG5の共有結合に必要なE2酵素ATG10やATG12のC末グリシンが多岐にわたる生物群で、独立に16回以上失われていることがわかりました。従って、ATG12とATG5の非共有結合性複合体への退縮進化は、以前の報告よりもっと広い範囲で発生していたと考えられます。そのほか、ATG12結合系を持たない生物や、ATG8タンパク質のみを持つ生物も存在します。繊毛虫門のテトラヒメナは、膜貫通領域があるATG8を持っているため、ATG結合系を頼らずに膜と結合している可能性があります。

次に、ATG結合系の進化を解明するために、ATG8やATG12を含むユビキチン様タンパク質の系統解析を行いました。その結果、ATG結合系は、ユビキチン、SUMO、NEDD8などとは独立にURM1様祖先型結合系から進化していること、ATG8はATG12より祖先型に近い可能性が示唆されました。

本研究は、真核生物におけるATG結合系の全体像を明らかにし、ATG結合系の進化やオートファジー経路の多様化に有用な情報をもたらすものです。

Overall, our study provides strong evidence that the common ancestor of all eukaryotes already had complete ATG conjugation systems, and that the non-canonical systems observed here are results of secondary losses in specific lineages. In fact, the eukaryotic common ancestor likely had the majority of the core ATGs and a functional autophagy pathway, which is consistent with it having a level of complexity comparable to extant eukaryotes. The big question of how eukaryotes emerged, and more specific to our study, how the ancestor of all ubiquitin-like systems (prokaryotic ThiS-ThiF, MoaD-MoeB and Urm1-like systems) evolved into the autophagy-specific forms, are particularly difficult to tackle due to the lack of the intermediate forms. However, the answer may be buried in prokaryotes, which accumulating genomic data and advancements in analysis methods will help uncover.

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  • 膜貫通領域のあるATG8
  • 東京工業大学生命理工学院  中戸川 仁  2022/04/25

投稿ありがとうございます。膜貫通領域があるATG8を持っている生物がいるということにたいへん驚きました!昔、酵母のAtg8をtail anchor配列で小胞体に刺したことがあるのですがfunctionしませんでした。小胞体から膜タンパク質がオートファゴソーム関連膜に流れ込むことはないため、Atg8をアンカーするには(タイミングよく膜から脱離させるためにも)脂質修飾が必要なのだろうと思っていました。膜貫通領域があるATG8を持っている生物はオートファジーは起こせているのでしょうか?それともそのようなATG8は非オートファジー機能を担っていると考えられるのでしょうか?

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  • Re: 膜貫通領域のあるATG8
  • 東京大学医学系研究科分子生物学分野  Sidi Zhang  2022/04/25

ご質問ありがとうございます。

テトラヒメナには、ATG8ホモログが5個あって、そのうち2個はカノニカルで、Programmed Nuclear Degradationという選択的オートファジー様な経路に重要と言われています。膜貫通領域があるATG8は、調べられていないため、機能は不明です。

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  • Re: 膜貫通領域のあるATG8
  • 東京工業大学生命理工学院  中戸川 仁  2022/04/25

ありがとうございます。誰かに解析して欲しいですね。