PubMedID | 35485417 |
---|---|
タイトル | Autophagy promotes organelle clearance and organized cell separation of living root cap cells in Arabidopsis thaliana. |
ジャーナル | Development (Cambridge, England) 2022 Jun;149(11):. |
著者 | Goh T, Sakamoto K, Wang P, Kozono S, Ueno K, Miyashima S, Toyokura K, Fukaki H, Kang BH, Nakajima K |
- 根の先端の細胞がスムーズに剥がれ落ちる仕組みを解明 -オートファジーが細胞を作り変えていたー
- Posted by 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域 郷 達明
- 投稿日 2022/06/18
DEVELOPMENT誌に掲載された私たちの論文を紹介させていただきます。
植物の根の先端は、根冠(こんかん、Root cap)と呼ばれる層状の組織に覆われています。根冠では、最も内側の層で新しい細胞が作られ、最も外側の層で細胞が自発的に剥離することで、構成細胞が常に入れ替わっています。これは植物の組織としては非常にユニークな性質です。この入れ替わりの過程で順次外側へと押し出された細胞は、根冠内での位置に応じて異なる働きを持つ細胞に作り変えられます。このとき細胞内の構造が大きく変化することは知られていましたが、根冠細胞がどのようにして細胞内構造や機能をダイナミックに変化させるのか、また、それを制御する機構や細胞剥離との関係については明らかになっていませんでした。
我々は成長を続ける根の先端を自動的に追尾することができる「水平光軸型動体トラッキング共焦点顕微鏡」を開発し、モデル被子植物であるシロイヌナズナの根冠細胞の構造を精密に経時観察しました。この観察から、最も外側の層が剥離すると、内側に接していた次の細胞層でアミロプラスト(重力感受に重要なオルガネラ)が縮小するとともに、液胞が急拡大して細胞体積のほぼ全体を占めるようになり、その直後に剥離が起きることが明らかになりました。さらに、オートファジーが、根冠の最外層細胞でタイミング良く活性化することで、液胞化などの細胞内の再構成を促進することを明らかにしました。興味深いことに、atg5-1変異体では根冠細胞間の接着が過剰に緩んでおり、野生型で見られるような層状の剥離ではなく、個々の細胞がバラバラに脱離していました。これらの結果から、オートファジーが根冠最外層の機能転換や剥離の準備期に特異的に活性化するようにプログラムされていること、また、オートファジーの活性化によって根冠細胞の内部構造の作り変えや、それに続く精密な剥離が制御されていることが明らかになりました。
Twitterに根冠細胞が剥離する動画をアップしております。ぜひご覧ください。
https://twitter.com/i/status/1537582097002811392
本論文については、”RESEARCH HIGHLIGHTS”に注目論文として紹介されるとともに、INTERVIEWSの”The people behind the papers”にて、研究の舞台裏も紹介していただきました。
https://journals.biologists.com/dev/article/149/11/e149_e1104/275724/Autophagy-caps-off-root-development
https://journals.biologists.com/dev/article/149/11/dev200926/275679/The-people-behind-the-papers-Tatsuaki-Goh-Kaoru