PubMedID 35938926
タイトル A pulse-chasable reporter processing assay for mammalian autophagic flux with HaloTag.
ジャーナル eLife 2022 Aug;11.
著者 Yim WW, Yamamoto H, Mizushima N
  • 哺乳類細胞で使える簡便で定量性の高いパルスチェイス型オートファジー活性レポーターの開発 – HaloTag processing assay –
  • Posted by 日本医科大学・先端医学研究所 山本 林
  • 投稿日 2022/08/15

最近、eLifeに掲載された私たちの論文を紹介させて頂きます。

オートファジーの研究を進めるにはオートファジー活性を評価・定量する方法が不可欠ですが、哺乳類細胞ではGFP-LC3-RFPやRFP-GFP-LC3といったレポーターが開発されているものの、いずれもFACSや蛍光顕微鏡観察を必要とするなど、簡便で定量性の高い方法がないというのが現状でした。一方、出芽酵母では1992年のオートファジーの発見からわずか3年後の1995年には大隅研でALP assayが開発され、簡便で定量性の高い方法が早期に確立されたことが出芽酵母オートファジー研究の飛躍的な進展に繋がりました。その後、より簡便なGFP-Atg8 processing assayが開発され、これは、GFP-Atg8が液胞内で分解されて生じるGFP断片の量をオートファジー活性としてウェスタンブロッティングで定量する方法となります。現在ではGFPを任意のターゲットタンパク質に付加することで、選択的オートファジーやオルガネラ分解の定量レポーターとして広く使われています。

このGFP processing assayを哺乳類細胞に応用する試みはこれまでにも行われていますが、GFPはリソソーム内で分解されやすく、GFPの代わりに分解耐性の高いRFPを用いた場合には、オートファジー誘導の前からリソソーム内へのRFP断片の蓄積が見られ、これは哺乳類細胞では恒常的オートファジーの活性が高いためだと考えられます。これらの問題を解決するため、パルスラベル型のタンパク質タグであるHaloTag (Promega) を用いたところ、HaloTagはリガンドと共有結合することではじめてリソソーム分解耐性となることが分かり、HaloTag-LC3をレポーターとすることでオートファジー活性を任意のタイミング(リガンド添加)から経時的に定量できるようになりました。TMRなどの蛍光性HaloTagリガンドを用いることで、HaloTagTMR-LC3およびHaloTagTMR断片をin-gelのまま蛍光検出することができるためウェスタンブロッティングの必要もなく、HaloTagTMR断片が検出される飢餓1-2時間の短時間からオートファジー活性の定量が可能で、飢餓数時間まで高い直線性と定量性を示します。また、HaloTag-GFPなどのLC3非依存型のレポーターをサイトゾルに発現させることで、非選択的オートファジー活性を定量することも可能となりました。HaloTag-GFPをERやミトコンドリアに局在させることで、ERphagyやMitophagyを簡便に短時間で定量することも可能です。また、HaloTag-GFP-LC3にすることでRFP-GFP-LC3型レポーターのようにオートファゴソームからオートリソソームへの変化を蛍光顕微鏡下で観察するが可能となり、さらにRFPを追加してHaloTag-GFP-LC3-RFPにすることでFACSでの定量も可能なthree-in-oneレポーターとして利用することもできます。

HaloTag processing assayのウィークポイントとしては、細胞をすりつぶす必要があるため生細胞でのスクリーニングに使えないという点とリガンドが高額という点が挙げられます。前者は、もともとGFP-LC3-RFPでのCRISPRスクリーニングが頭にあったので、これと相補的な使用方法になるだろうと考えていました。上記のthree-in-oneレポーターはGFP-LC3-RFPとHaloTag processing assayの両方を備えたレポーターとして作ってみました。後者は、、、未解決です、節約して使ってみてください、それでも定量性高く検出できると思います。

HaloTag processing assayは簡便で定量性が高く、汎用性も高いことから、今後、多くのみなさんに使って頂ければと思っています。論文に使用したレポーターは全てAddgene(https://www.addgene.org/browse/article/28225176/)に入れてありますので。

なお、本研究は東京大学大学院医学系研究科水島研究室で行われたものになります。
私自身はこの7月から日本医科大学先端医学研究所に移って小さなラボをスタートしたところです。スタッフやポスドクを募集していますので興味のある方は是非ご連絡ください。よろしくお願いします。

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  • パルスチェイス型レポーター、良いですね!
  • 東京工業大学 生命理工学院  中戸川 仁  2022/08/16

林さん、投稿ありがとうございます!
酵母でも長時間の飢餓後にその時点での○○ファジーの活性を測りたい、と思うことがあるので、酵母でも有用な方法かもしれないと思いました。
酵母でworkするかは試してないですよね?^^;

2
  • 酵母では使えないかもしれないです、、、
  • 日本医科大学  山本 林  2022/08/16

中戸川さん

コメントどうもありがとうございます。
中戸川さんが指摘してくれたようにこのレポーターは任意のタイミングでラベル可能なので、飢餓 0-2 h の間のオートファジー活性と飢餓 8-10 h の間のオートファジー活性を比較するという使い方も可能になります。

しかし、、、酵母では使えないかもしれないです。
この論文作成中に酵母で試したわけではないのですが、大隅研のときにHaloTagを使ったことがあって、どうやらリガンドが細胞壁を越えられないらしく効率がとても悪かったです。そこを上手く工夫すれば使えるようになるかもしれないですが。HaloTag以外のタグ-リガンドの組み合わせを試すのもありかもしれないです。

3
  • お返事ありがとうございます
  • 東京工業大学 生命理工学院  中戸川 仁  2022/08/16

Haloタグに対するリガンドでもリガンドによって酵母細胞に入る効率が異なるみたいですので、入った上で液胞分解耐性になるかを見ていないのでしたら試す価値はありそうですね。
検討してみたいと思います。

ちなみに、Haloタグがリガンド依存的にリソソーム分解耐性になるとはとても好都合な性質を備えていたんだなあと感心しましたが、狙って調べてわかったんですか?

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  • リガンド結合すれば堅くなるかも
  • 日本医科大学  山本 林  2022/08/16

リガンド結合すればリソソーム内で耐性になるかもと期待して試してみたら思いのほか上手くいったので幸運でした。
リガンド未結合のHaloTagがどれくらい分解されるか(リガンド添加前のバックグラウンドをどれくらい下げられるか)も期待以上に上手くいって、これについては、PromegaのHPでHaloTagのリガンド反応がpH感受性と書いてあったので、リソソーム内に先に入っていた分についてはリガンド反応しないだろうということも考えていました。

培養細胞では市販のHaloTagリガンドはだいたい試しましたがTMRがもっとも明るく(低コストで)使えたのでこれを最終形としましたが、他のリガンドでもHaloTag自体は分解耐性になったので酵母でも試してみると面白そうですね。

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  • なるほど
  • 東京工業大学 生命理工学院  中戸川 仁  2022/08/16

さすがですね!