PubMedID 36306824
タイトル A method for the isolation and characterization of autophagic bodies from yeast provides a key tool to investigate cargos of autophagy.
ジャーナル The Journal of biological chemistry 2022 Oct;102641.
著者 Kawamata T, Makino S, Kagohashi Y, Sasaki M, Ohsumi Y
  • オートファジックボディ(オートファゴソーム内膜構造体)の精製方法
  • Posted by 東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター 堀江-川俣 朋子
  • 投稿日 2022/11/03

オートファジーが誘導されると、細胞質にオートファゴソームと呼ばれる二重膜構造体が出現し、液胞/リソソームに運ばれ分解されます。オートファジックボディ(AB)は、液胞で分解されるオートファゴソーム内膜構造体(一重膜)で、酵母で名付けられました。酵母は液胞が大きく、液胞内のリパーゼ活性がない株を使用すると、たくさんのオートファジックボディが液胞の中で激しく動きまわる様子が観察できます。オートファジックボディの中には、オートファジーにより取り込まれた細胞質成分(基質)などが含まれています。

私は酵母でオートファジックボディ(AB)を単離する方法を確立し、最近JBCに受理されました。ABを分解できないatg15破壊株を用いて、オートファジーを誘導後、まず液胞を単離します。ここではABを含む液胞が取得できます。その後、液胞膜のみが壊れる適切なサイズのフィルターでABを含む液胞を壊します。フィルター後に密度勾配遠心を行うと、ABを含む液胞を以下の3つの画分に分画することができました。(1. 液胞内の可溶性タンパク質が多く含まれる画分、2. 液胞膜成分、3. AB画分)。3のAB画分はオートファジーの基質であるリボソームや細胞質タンパク質を含むために重い画分に回収されます。精製したABは、膜構造が保たれていることを生化学的に確認しています。

本手法は、オートファゴソームの内膜構造体の精製方法として初めての報告です。ABが精製できたことにより、オートファジーの基質の解析(基質の探索、基質の選択性の問題)、膜の脂質組成や特性の解析、オートファゴソーム内膜のマーカータンパク質の探索、膜脂質分解メカニズムの解明するための基質としての利用など、新たな研究が可能になりました。現在、この手法に基づき精製したABを用いて研究を進めています。ABの脂質組成を知り、その由来や特性(外膜との違いなど)を理解すること、またAB膜の分解機構を明らかにするのが次の目標です。

この論文で確立した方法論は、液胞を持つ植物の系では応用できるかもしれません。