PubMedID | 36697253 |
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タイトル | The GET pathway serves to activate Atg32-mediated mitophagy by ER targeting of the Ppg1-Far complex. |
ジャーナル | Life science alliance 2023 Apr;6(4):. |
著者 | Onishi M, Kubota M, Duan L, Tian Y, Okamoto K |
- 小胞体膜タンパク質挿入装置GET経路はPpg1-Far複合体の小胞体繋留を介して効率的なマイトファジーに寄与する
- Posted by Max Planck Institute for Biology of Ageing 大西真駿
- 投稿日 2023/02/11
大阪大学・大学院生命機能研究科・ミトコンドリア動態学研究室(岡本浩二准教授)から発表しました論文をご紹介させていただきます。
ミトコンドリア特異的オートファジー:マイトファジーは、ダメージを受けたり、余剰に生じたりしたミトコンドリアを選択的に分解するシステムです。出芽酵母においてマイトファジーが誘導されるとき、他の細胞質成分と区別してミトコンドリアのみを分解の標的とすべく、その目印として働くタンパク質Atg32がミトコンドリア外膜に蓄積します。ミトコンドリア上に集積したAtg32は、Atg8やAtg11などのオートファジー関連タンパク質と結合し、マイトファジーを開始する複合体を形成します。
これまでに私たちの研究グループでは、出芽酵母を用いたゲノムワイドな遺伝子スクリーニングの結果から、GET経路の構成因子を欠損した酵母株でマイトファジーの効率が減少することを見出していました。GET経路は、小胞体膜への膜タンパク質の挿入を行う経路として知られています。しかし、Get因子がどのようにミトコンドリアの分解に寄与するかは未解明のままでした。
私たちは、Get因子を欠損した酵母株において、マイトファジー誘導条件におけるAtg32のリン酸化レベルが減少していることを突き止めました。Atg32のリン酸化は、Atg11との結合を安定化することが知られており、マイトファジーを駆動させるのに重要です。実際、Get欠損株では、Atg32-Atg11相互作用が不安定化していることがわかりました。なお、Atg32の脱リン酸化を担い、Atg32-Atg11相互作用の抑制に寄与するタンパク質として、Ppg1が知られています。興味深いことに、Ppg1と結合する小胞体膜タンパク質Farが、Get欠損株ではミトコンドリアへ過剰に標的化する様子が観察されました。この際、Farタンパク質を人工的に小胞体に局在させると、Atg32-Atg11相互作用、マイトファジーが有意に回復することも見出しました。これらの結果は、GET経路がPpg1-Far複合体を小胞体膜へ繋留しミトコンドリアへの局在を防ぐことで、Atg32のリン酸化とマイトファジーの駆動に寄与することを示唆しています。
Get欠損株では、種々の小胞体膜タンパク質がミトコンドリア膜へと配送されることが知られています。一方、ミトコンドリア外膜タンパク質Msp1は、ミトコンドリアに配送された「よそ者」タンパク質を除去する機能を持っています。そこで、GetとMsp1を二重欠損させてみたところ、マイトファジーの効率が相乗的に減少することがわかりました。この際、Farタンパク質を人工的に小胞体に局在させると、マイトファジーが野生型と同程度まで回復しました。これらの結果から、Msp1がミトコンドリア外膜上のPpg1-Far複合体を取り除くことで、マイトファジーの進行に働いている可能性が考えられます。
本研究では、小胞体の膜タンパク質挿入装置がマイトファジー駆動因子の活性化機構に寄与しているという証拠を得、さらにミトコンドリアの膜タンパク質排出装置と絡めて、マイトファジー制御の一端を明らかにすることができました。こうした視点からマイトファジーの仕組みを解明することは、オルガネラ間連携の新たな役割の理解にもつながるものと期待しています。