PubMedID | 36640664 |
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タイトル | Nucleic acid uptake occurs independent of lysosomal acidification but dependent on ATP consumption during RNautophagy/DNautophagy. |
ジャーナル | Biochemical and biophysical research communications 2023 Feb;644105-111. |
著者 | Contu VR, Sakai R, Fujiwara Y, Kabuta C, Wada K, Kabuta T |
- RNautophagy/DNautophagyの核酸取り込み過程におけるリソソームpHとATP消費の寄与
- Posted by 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 Contu Viorica Raluca
- 投稿日 2023/02/16
年末年始に掲載され、冬休みの喜びの一つとなったRNautophagy/DNautophagy (RDA)についての私たちの論文を紹介させて頂きます。
RDAはオートファジーの一種であり、RDAにおいては、核酸がATP存在下でリソソーム内に直接取り込まれ、分解されます。どのオートファジー経路の場合でも基質分解においてリソソーム内部の酸性化は必須ですが、基質のリソソーム内への輸送におけるリソソーム酸性化の必要性については不明な点が多いです。
本研究ではまず、リソソームの酸性pHを維持する液胞型ATPアーゼ(V-ATPase)に着目して、RDAにおける取り込み過程においてのリソソーム酸性化の関与を調べました。Bafilomycin A1 (V-ATPaseの特異的阻害剤)処理により、単離リソソームにおけるRNA分解が有意に低下しましたがRNA取り込みには影響がありませんでした。同様にV-ATPaseの触媒活性に必須なサブユニットAをコードするAtp6v1aをノックダウンした場合でもコントロールと比べて単離リソソームによるRNA取り込みには変化がありませんでした。以上のことから、RDAにおける基質のリソソーム取り込みには、リソソーム酸性化は必須ではないことがわかりました。
次に、RDAにおける核酸の取り込みはエネルギー消費を伴うかどうかについて調べました。ATP再生系の存在下では核酸がリソソームに取り込まれましたがATP-γ-Sを加えてATP加水分解反応を阻害することにより核酸が完全に取り込まれなくなりました。このことからRDAにおける核酸の取り込みにおいてATPの消費が必要であることが明らかとなりました。また、V-ATPaseの阻害がRDAにおける核酸取り込みに影響しないデータとあわせて、RDAにおける核酸の取り込みに必要なATP消費にはV-ATPaseが関与しないこともわかりました。
ディスカッションでは、知られているオートファジー経路における基質のリソソーム内への輸送に着目してATPの消費とリソソームの酸性化の観点から比較しました。ご興味のある方はお目通しいただければ幸いです。
コロナ禍のなか日本を離れましたが、やり残していた仕事を論文にできて嬉しく思っています。手伝って頂いた皆様にこの場を借りて感謝いたします。