PubMedID 38953305
タイトル Comprehensive knockout analysis of the RAB family small GTPases reveals an overlapping role of RAB2 and RAB14 in autophagosome maturation.
ジャーナル Autophagy 2024 Jul;.
著者 Haga K, Fukuda M
  • Rab-KO細胞ライブラリーを用いた、非選択的オートファジーを制御するRabの網羅的スクリーニング
  • Posted by 東北大学大学院生命科学研究科 羽賀健太郎
  • 投稿日 2024/07/09

最近Autophagy誌に掲載された私たちの論文を紹介させていただきます。

低分子量Gタンパク質のRabファミリーは小胞輸送のレギュレーターとして知られているタンパク質ファミリーです。オートファジーについては、今までに当研究室からオートファゴソーム成熟を制御するRab2、Rab7A(Fujita et al., 2017)をはじめとして、Rab12やRab33B等のRabの関与を報告しており、他のグループのものも合わせると哺乳類に存在する約60種類のRabアイソフォームのうち、半数以上でオートファジーへの関与が報告されています。しかし、これらのRabについては解析手法や条件の違いなどもあり、オートファジーにおけるRabの必要性(必須かどうか)については、統一的な見解は得られていませんでした。今回、私たちはRabのノックアウト(KO)細胞ライブラリー(Homma et al., 2019)を用いて非選択的オートファジーを制御するRabの網羅的なスクリーニングを行いました。その結果、今までにオートファジーへの関与が報告されていたRab1、Rab2、Rab7Aに加えて、新たにRab14を非選択的オートファジーに重要なRabとして同定しました。

Rab14はエンドソームやトランスゴルジ網への局在が知られているRabで、スクリーニングを行った当時は哺乳類でオートファジーに関連する報告がありませんでした。Rab14-KO株では、富栄養条件下でLC3がわずかに蓄積する表現型が見られており、これは進化的に近縁なRab2のKO株の表現型と非常に良く似たものでした。そこで、これら2つのRabの同時KO株を作製したところ、顕著なLC3の蓄積が見られ、これはRab2AとRab14のどちらの再発現によっても部分的にレスキューされました。また、細胞内局在を観察すると、Rab14はエンドソームに加えてオートファゴソームにも局在していました。さらに、Rab14はオートファゴソーム成熟におけるRab2のエフェクター分子として報告のあったHOPS複合体のサブユニットと相互作用することも明らかになりました。以上の結果から、従来のRab7Aに加えて、Rab14がRab2と相補的に機能することで、オートファゴソームの成熟過程を制御していることが示唆されました。

本研究によって非選択的オートファジーに重要な4つのRabの同定に成功しましたが、同様にRabの関与が数多く報告されている選択的オートファジーに対しては未だにRabの必要性について統一的な見解は得られていません。今後、RabのKO細胞ライブラリーを用いてERファジーやマイトファジーについても網羅的な解析を行うことで、Rabによるオートファジーの制御についてさらに理解を深めていきたいと考えています。

最後になりましたが、本研究を進めるにあたりご指導いただいた福田先生、福田研の方々、そして学会等で貴重なアドバイスをいただきました数多くの先生方に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。