PubMedID | 39420095 |
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タイトル | Autophagy adaptors mediate Parkin-dependent mitophagy by forming sheet-like liquid condensates. |
ジャーナル | The EMBO journal 2024 Oct;. |
著者 | Yang Z, Yoshii SR, Sakai Y, Zhang J, Chino H, Knorr RL, Mizushima N |
- ミトコンドリア上に形成されるシート状液滴とその意義
- Posted by 東京大学大学院医学系研究科 吉井 紗織
- 投稿日 2024/10/25
最近EMBO Journal誌に掲載された私たちの論文について紹介させていただきます。
損傷を受けたミトコンドリアはユビキチンリガーゼであるParkinによりユビキチン化され、ミトコンドリア特異的オートファジー(マイトファジー)により分解されます。この過程では、OPTNやNDP52といったオートファジーアダプタータンパク質がミトコンドリア上に集積することが必須となります。これらのアダプタータンパク質は、サイトゾルで液滴を形成する性質がありますが、液滴形成の性質とマイトファジーとの関連は不明でした。
私たちは、損傷したミトコンドリア上に集積したアダプタータンパク質がミトコンドリア表面で相分離し、ミトコンドリアを包むシート状の液滴を形成することを示しました。このシート状液滴は、ミトコンドリア同士やミトコンドリアと隔離膜の間で毛細管現象(濡れ効果)を引き起こし、これらの膜の接触を促進すると考えられます。さらに、このシート状液滴はATG9小胞をミトコンドリア上に係留し、これがマイトファジーの進行に必須であることが明らかとなりました。
今回の研究により、液滴がオルガネラ間の接触を媒介する新たな現象が確認されましたが、シート状液滴が他のオルガネラにおいても一般的に形成されているのか、またオルガネラ相互作用に広く関与しているのかは、今後の重要な研究課題です。この発見が、細胞内でのオルガネラ間相互作用に関する普遍的な概念として確立される可能性が期待されます。
粛々と実験をこなし、何事にも動じない筆頭著者のYangさん、Yangさんが去った後にリバイス実験を担当して下さった修士学生のZhangさん、美しい数理モデルとそのコマコマした修正に付き合ってくださった境さん、研究推進力と奇怪な動きにあふれるOGの千野さん、液滴による膜のWettingを永遠とディスカッションして下さったRolandさん、そして最後まで惜しみないサポートをしてくださったとともに、何度失敗してもめげずにキーデータを取得した(下記参照)水島さんに感謝申し上げます。
*水島さん自らOPTN液滴によるATG9小胞の係留の分子動力学シミュレーションを行いました(Mizushima et al., unpublished)↓*
Movie S1. 分子動力学シミュレーション:
https://x.com/MizLabUT/status/1848934357815464232
Movie S2. シミュレーション実験風景:
https://x.com/MizLabUT/status/1848935253433585700
Movie S3. 条件検討中:
https://x.com/MizLabUT/status/1848936008651575770