PubMedID | 39472561 |
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タイトル | AAA+ ATPase chaperone p97/VCP governs basal pexophagy. |
ジャーナル | Nature communications 2024 Oct;15(1):9347. |
著者 | Koyano F, Yamano K, Hoshina T, Kosako H, Fujiki Y, Tanaka K, Matsuda N |
- p97/VCPとFAF2によるペキソファジーの抑制機構
- Posted by 東京科学大学 (旧:東京医科歯科大学)、総合研究院難治疾患研究所 小谷野史香・松田憲之
- 投稿日 2024/11/16
最近Nature communications誌に掲載された私たちの論文について紹介させていただきます。
ペルオキシソームは、脂質代謝と化学物質の解毒を担う極めて重要な細胞内小器官であり、生合成と分解によってその恒常性が維持されています。ペルオキシソームが生合成される仕組みの理解が進展する一方で、ペルオキシソームの分解に関する詳細な分子機構には多くの謎が残されていました。
私たちは、p97/VCPの補因子であるFAF2/UBXD8(以下、FAF2)に注目して研究を行い、p97/VCPの補因子として機能するFAF2が、ペルオキシソームの品質管理に関与していることを明らかにしました。
p97/VCPは、蛋白質の解きほぐしや膜から蛋白質を引き抜く機能を持つことが知られています。一方、FAF2は、ユビキチンおよびp97/VCPとの相互作用に必要なUBAドメインとUBXドメインを有する膜局在型のp97/VCP補因子であり、ミトコンドリアや小胞体、脂肪滴に局在することが知られています。FAF2を欠損した細胞では、ペルオキシソームの数およびペルオキシソームを構成する蛋白質の量が減少するという表現型が確認されました。解析の結果、FAF2の機能不全によってペルオキシソーム膜にユビキチン化されたPMP70が蓄積することでOptineurinがリクルートしてペキソファジーが誘導されることがわかりました。
これらの結果から、「p97/VCPとFAF2は通常時に不良なペルオキシソーム膜蛋白質を除去することで、オートファジーによるペルオキシソームの過剰な分解を防いでいる」ことが明らかになりました。FAF2のみならず、既知のp97/VCP補因子がペルオキシソームの品質管理に寄与することが報告されたのは本研究が初めてとなります。ペルオキシソームの機能障害に起因する疾患の発症機構解明に向けた足掛かりとなれば幸いです。
本研究は、私が東京都医学総合研究所に在籍していたころに始めたテーマです。出産を挟んで2回目の投稿でMajor revisionとなった後、査読者に納得してもらうためにRebuttal letterを60ページ書き上げました。最終的にアクセプトの返事をもらうまでとても時間がかかってしまいましたが、やっと論文化することができました。携わってくださったすべての方々に感謝申し上げます。
松田の追加コメント
我々の論文がopenになったのは2024年10月ですが、2024年9月に "The p97-UBXD8 complex maintains peroxisome abundance by suppressing pexophagy" という論文がbioRxivに投稿されました。著者のMalavika RamanはVCPとcofactorの研究者であり、定量的プロテオミクス解析で「FAF2/UBXD8のKO細胞ではペルオキシソーム関連タンパク質の量が減少している」という知見から研究をスタートして、同様の結論に至っています。