PubMedID | 40552710 |
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タイトル | The triad interaction of ULK1, ATG13, and FIP200 is required for ULK complex formation and autophagy. |
ジャーナル | eLife 2025 Jun;13. |
著者 | Hama Y, Fujioka Y, Yamamoto H, Mizushima N, Noda NN |
- ULK1, ATG13, FIP200の三者相互作用はULK複合体形成とオートファジーに必須である
- Posted by 北海道大学 遺伝子病制御研究所 濱祐太郎
- 投稿日 2025/07/03
北海道大学・野田研究室の濱 祐太郎です。
最近eLifeに掲載された我々の論文について紹介させていただきます。
哺乳類ULK複合体は、小胞体膜上で液滴を形成することでオートファゴソーム形成の場を作り、オートファジー関連構造体と小胞体との膜界面を作り出すドライバーとして振る舞うと考えられます。
ULK複合体はULK1/2、ATG13、FIP200およびATG101からなり、そのうちULK1とATG13とFIP200の相互作用が、ULK複合体のコアを成します。
しかし、そのコア部分についての構造情報は不足していました。
今回、我々はULK複合体コアを構成する相互作用について、AlphaFold multimerによる複合体予測構造を出発点としてIn vitroとIn vivoの両面から解析を行いました。
その結果、
・これまで細胞内で確認されていたULK1-ATG13相互作用、ATG13-FIP200相互作用に加え、直接のULK1-FIP200相互作用が存在すること
・したがって、ULK1とATG13とFIP200の三者それぞれが他の二者と相互作用してULK複合体コアが形成されていること
・他の二者との相互作用のうち片方を損ねただけでは、間接的な相互作用により相補されてオートファジー機能が部分的に維持されるが、両方の相互作用を損ねることでようやくULK複合体が壊れ、オートファジーが起こらなくなること
を主に明らかにしました。
FIP200のN末端ドメインはAtg17と相同な構造を持ち、出芽酵母ではAtg17とAtg13の相互作用がAtg1/ULK複合体の液-液相分離に重要です。
このことから、今回の構造から液-液相分離メカニズムへの洞察が得られることを、当初は期待しました。
しかしながら、今回の構造はあくまで複合体の「単位」を構成するものであり、液-液相分離を媒介する他の相互作用が存在すると考えられます。
今後も、哺乳類のオートファジー始動(オートファジーに関連する小胞体膜界面の形成)メカニズムに関する研究を行っていきます。
また、Atg1/ULK複合体は進化的に多様化していることから、進化およびその意義に注目した解析も行っています。
裏話です。
私は博士課程在学中にATG13-FIP200相互作用を解析をしていたことがあり、1年半かけて、当時報告のあったATG13中のFIP200相互作用残基Phe394に加え第二のFIP200相互作用残基Phe453を発見しました。
しかし、これら残基の二重変異体ではオートファジーの障害は全く認められず、落胆しながらひっそりとお蔵入りにしました。
2022年、野田先生にAlphaFold multimerを走らせてもらうと、上記2つの残基に加え、3か所目の相互作用残基Phe377が、複合体全体の立体構造と共に見いだされました。
大きな興奮を覚えると同時に、たった1日でこれだけの情報が出てくるAlphaFoldの威力に驚かされました。
主要な結果が出揃ったくらいの2023年、海外のグループからCryoEMによってほぼ同様の構造を決めたというプレプリントが出ました。
我々の論文化が彼らより1年ほど遅れてしまったこともあり、彼らの構造も参考にして解析をしましたという形に論文の内容を修正しました。
本研究は、学術変革領域研究(A)「オートファジーから拡がる膜界面生物学」を含む複数のご支援のもと、野田研究室にて実施させていただきました。
In vitroのデータは全て藤岡 優子先生に取得していただきました。
また野田 展生先生には最初の構造予測を行っていただいただけでなく、論文執筆に関して全体にわたってご指導いただきました。
誠にありがとうございました。
また、私のデータの大半は、北海道大学ではなく微生物化学研究所にて取得させていただきました。
居候の身分にもかかわらず長期間にわたり実験をさせていただいた的場 晃一先生、丸山 達朗先生をはじめ、微生物化学研究所の皆様にたいへんお世話になりました。
深く感謝申し上げます。
そして、上述の通り博士課程在学中、東京大学・水島研究室でも同じトピックの研究に従事していました。
博士課程のご指導を賜りました山本 林先生、水島 昇先生に厚く御礼申し上げます。