PubMedID | 40455867 |
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タイトル | Biallelic LGI1 and ADAM23 variants cause hippocampal epileptic encephalopathy via the LGI1-ADAM22/23 pathway. |
ジャーナル | Brain : a journal of neurology 2025 Jun;. |
著者 | Hirano Y, Miyazaki Y, Ishikawa D, Inahashi H, Al-Hassnan ZN, Zifarelli G, Bauer P, Alvi JR, Sultan T, Thompson ML, Sezer A, Konuşkan B, Hajir RS, El-Hattab AW, Efthymiou S, Ishida A, Yokoi N, Kornau HC, Schmitz D, Prüss H, Houlden H, Ikegaya Y, Fukata Y, Fukata M, Maroofian R |
- LGI1–ADAM22/23関連疾患スペクトラム
- Posted by 名古屋大学大学院医学研究科 深田優子
- 投稿日 2025/09/06
学術変革A膜界面生物学の計画班として参加することになりました。
深田正紀研究室で、シナプス機能と病態の研究をしています。
シナプスのナノスケール構築・機能に関わるタンパク質複合体とパルミトイル化脂質修飾を起点に、シナプス膜界面でおこる動的な分子協奏が脳機能と脳病態に果たす役割を明らかにしたいと考えています。
どうぞよろしくお願いいたします。
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2025年8月6日付国際科学雑誌『Brain』誌に掲載された論文を紹介します。
近年のヒト全ゲノムシーケンス解析やヒトエクソーム解析の普及により、新規の遺伝子バリアント(変異)が次々と報告されていますが、それらの多くの病態メカニズムは未だ十分に明らかにされていません。これまでに本研究グループは、常染色体顕性てんかんの原因遺伝子として報告されていた分泌タンパク質LGI1とその受容体ADAM22/23の研究を進め、LGI1-ADAM22/23複合体が神経細胞のシナプス伝達や可塑性、興奮性制御に重要な役割を果たしていることを報告してきました。本研究では、国際多機関共同研究を通じて、最初のLGI1とADAM23の両アレル性バリアント(変異)を有する「発達性てんかん性脳症患者」を見出しました。これらLGI1バリアントの分泌レベルを高精度に測定したところ、残存するLGI1機能と患者の臨床症状の重篤度の間に高い相関性があることが明らかになりました。また、Lgi1欠損マウスの電気生理学的解析から、てんかんの焦点は海馬原性であることを突き止めました。さらに、LGI1-ADAM22/23経路が破綻したマウスの行動学的解析により、LGI1-ADAM22/23経路の破綻は、てんかん発作以外に認知機能障害も引きおこすことを見出しました。これらの発見は、 “LGI1–ADAM22/23関連疾患スペクトラム”という新しい脳疾患分類を提案し、その病態メカニズムを明らかにした点で重要であると共に、多くの国際機関との共同研究の成果としても意義深いと言えます。
下記もご参照下さい。
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2025/08/lgi1-adam2223.html