PubMedID | 40842239 |
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タイトル | DHX8 regulates degradation of RNA by RNautophagy. |
ジャーナル | Nucleic acids research 2025 Aug;53(15):. |
著者 | Sakai R, Takeda E, Kabuta C, Contu VR, Fujiwara Y, Fujikake N, Hashimoto T, Ohsumi Y, Kabuta T |
- DHX8 regulates degradation of RNA by RNautophagy
- Posted by 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 酒井 了平
- 投稿日 2025/09/25
このたび、私たちの論文が掲載されましたのでご紹介いたします。
RNautophagyはRNAがリソソームに直接取り込まれて分解される経路です。これまでに、私たちはリソソーム膜タンパク質であるLAMP2CやSIDT2が取り込みを仲介することを報告してきましたが、他にどのような因子が関与してRNA取り込みを制御しているのかは不明でした。本研究では、RNA helicaseであるDHX8を新たな制御因子として同定しました。
私たちは以前poly-G/dG配列が人工的な選択的基質であることを見いだしており、本研究ではこのことを利用してpoly-dGに結合するタンパク質の網羅的スクリーニングを行いました。Biotin-poly-dGプルダウンと質量分析の結果、多数の結合タンパク質が検出され、その中から複数のRNA helicaseを候補として抽出しました。その後の培養細胞での機能解析により、DHX8がSIDT2依存的にRNA分解を制御していることを明らかにしました。
さらに、DHX8はATP依存的RNA helicaseですが、DHX8の変異体を用いた解析結果などから、ATPase活性ではなくRNA結合活性がRNautophagyに重要であることが示唆されました。また、DHX8がSIDT2と相互作用し、両者を共発現することで核酸結合能が増強されることを見いだしました。これらの結果から、DHX8はRNA結合能を介してSIDT2と協調的に作用し、RNautophagyを促進することが示唆されました。
加えて、CAGリピートRNAやpolyQタンパク質凝集に対するDHX8の機能的意義をpolyQ病モデル細胞を用いて解析しました。その結果、DHX8をノックダウンするとCAGリピートRNAの分解が低下し、RNA fociが増加しました。また、polyQタンパク質の可溶性画分および不溶性凝集体の量が増加しました。これらの結果から、DHX8は病原性リピートRNAの制御に寄与することが示唆されました。
本研究は、主に新学術領域研究「マルチモードオートファジー」の支援を受けて実施しました。MS解析は東京科学大学の大隅良典先生、武田英吾先生(現・北海道大学 野田研究室)との共同研究による成果であり、この場を借りて深く感謝申し上げます。
ラボを移ってからのリバイスでしたので、追加実験については土日祝日を中心に取り組みました。リバイスの半年以上にわたる作業を株田智弘先生ならびに株田千華先生に支えていただき、ようやく完成に至ることができました。改めて心より感謝申し上げます。