| PubMedID | 41145518 |
|---|---|
| タイトル | Intrinsically accelerated cellular degradation is amplified by TDP-43 loss in ALS-vulnerable motor neurons in a zebrafish model. |
| ジャーナル | Nature communications 2025 Oct;16(1):9213. |
| 著者 | Asakawa K, Tomita T, Shioya S, Handa H, Saeki Y, Kawakami K |
- ALSで運動ニューロンが変性する理由の考察
- Posted by 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 浅川和秀
- 投稿日 2025/10/29
先日公表された私たちの研究成果について、ご紹介させていただきます。
神経変性疾患では、疾患ごとに障害を受ける神経細胞の種類が異なりますが、こうした「選択的な脆弱性」が生じる仕組みは、いまだ十分には解明されていません。私たちは今回、筋萎縮性側索硬化症(ALS)において、筋肉の収縮を司る「運動ニューロン」がなぜ選択的に変性するのか、その理由を探りました。
本研究は、ゼブラフィッシュの中枢神経系におけるオートファジーの動態を可視化する実験から始まりました。脊髄全体を解析したところ、GFP-LC3の分解が特に活発な細胞群があり、それがALSで最も脆弱とされる大型の運動ニューロンであることを見出しました。大型の運動ニューロンではプロテアソーム活性も高く、さらにALS関連因子TDP-43遺伝子を欠損させると、これらの分解経路の活性が一層亢進しました。オートファジーを阻害すると軸索伸長が阻害されることから、細胞内の分解機構が神経細胞を保護する役割を果たしていると考えられました。大型の運動ニューロンでは、生得的に分解基質が多く、そのため常に高い分解活性を維持する必要があると推定されます。このような恒常的な代謝負担が、ALSに対する脆弱性の一因となっているのではないか、という考えを提唱しました。
本研究の遂行にあたり、オートファジーフラックスのプローブをご提供くださった水島昇先生、森下英晃先生に心より御礼申し上げます。また、本研究は新学術領域研究「マルチモードオートファジー」領域からの4年間のご支援とご議論をいただいて実現したものであり、小松雅明代表をはじめ、多くの先生方からのご助言に深く感謝申し上げます。