PubMedID 41530540
タイトル Mitochondrial fission during mitophagy requires both inner and outer mitofissins.
ジャーナル EMBO reports 2026 Jan;.
著者 Furukawa K, Maruyama T, Sakai Y, Yamashita SI, Inoue K, Fukuda T, Noda NN, Kanki T
  • マイトファジーの際のミトコンドリア分裂には2種類のマイトフィッシンが必要である
  • Posted by 九州大学大学院医学研究院 古川健太郎
  • 投稿日 2026/01/14

最近EMBO Reports誌に掲載された私たちの論文を紹介させていただきます。

余剰あるいは異常が生じたミトコンドリアはマイトファジーによって分解されます。ところが、通常のミトコンドリアはサイズが大きいため、マイトファジーで分解される前に分裂して小さくなる必要があります。従来、この分裂はダイナミン様タンパク質Dnm1 (哺乳類ではDrp1) が担うと考えられてきましたが、これらが欠損してもマイトファジーが進行することから、別の分裂機構の存在が示唆されていました (Yamashita et al., J Cell Biol, 2016)。

私たちは、酵母を用いた研究により、2023年にミトコンドリア内部の膜間腔スペースで働く分裂因子としてマイトフィッシン/Atg44を発見し、これがマイトファジーの際の分裂に不可欠であることを明らかにしました (Fukuda, Furukawa, Maruyama et al., Mol Cell, 2023)。しかしながら、Atg44だけで分裂が完了するのか、あるいは、ミトコンドリアの外側から働く因子が存在するのかは不明のままでした。

本研究では、ミトコンドリアに存在する機能未知のMco12というマイクロタンパク質に着目しました。Mco12はマイトファジーに部分的に必要であるだけではなく、Atg44と類似した構造やミトコンドリア分裂活性を持ち、さらには後述する脂質膜切断活性を持つことを見いだしました。これらの特徴にもとづき、Mco12を「マイトフィッシン2 (Mfi2)」と命名しました。

精製Mfi2を用いたin vitro実験により、Mfi2はAtg44と同様に脂質膜に直接結合し、切断する活性を持つことが分かりました。Mfi2は特に、ミトコンドリア特有の脂質であるカルジオリピンを含む膜に対して強く作用するという特徴を示しました。また、粗視化分子動力学シミュレーションやカルジオリピン合成酵素欠損株を用いた解析により、Mfi2がカルジオリピンを含む膜と安定して結合することが確認されました。
 
さらに、Mfi2とDnm1の両方を欠損した酵母ではマイトファジーが著しく低下し、その原因がミトコンドリア分裂不全であることが分かりました。すなわち、Mfi2とDnm1はともにミトコンドリアの外側から分裂を促進しており、両者が独立に機能することでマイトファジーの際の分裂効率が高まることが示唆されました。このことは、Dnm1を単独で欠損させてもマイトファジーが阻害されないという事実とも整合します。

以上の結果から、ミトコンドリア分裂には2種類のマイトフィッシンAtg44/Mfi2およびDnm1が重要な役割を果たし、内外双方からミトコンドリアを切断するという新しいモデルを提唱しました。この仕組みは、マイトファジーに特有の分裂機構の理解を大きく前進させる成果です。

現在、マイトフィッシンは酵母などの真菌類や一部の植物でしか見つかっていませんが、マイトファジーの研究結果から、哺乳類でもその存在が示唆されています。今後は哺乳類におけるマイトフィッシンに相当する因子を特定することが重要課題の一つです。ミトコンドリアの形態はその機能と密接に関連しており、多くのミトコンドリア関連疾患で形態異常が認められています。特に、哺乳類におけるダイナミン様タンパク質Drp1の変異は神経変性疾患や心疾患など様々な病態を引き起こすことが知られています。マイトフィッシンはミトコンドリア形態制御の重要因子であることから、その理解が進むことで、形態異常を伴う多様な疾患の病態解明や新たな治療法の開発に寄与できると期待されます。

最後に、本研究を遂行するにあたり、in vitro実験では微生物化学研究所の丸山達朗先生、北海道大学の野田展生先生、粗視化分子動力学シミュレーションでは横浜市立大学の境祐二先生にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。