PubMedID | 25680528 |
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タイトル | Localization of Atg3 to autophagy-related membranes and its enhancement by the Atg8-family interacting motif to promote expansion of the membranes. |
ジャーナル | FEBS Lett, 2015 Feb 11; [Epub ahead of print] |
著者 | Sakoh-Nakatogawa M, Kirisako H, Nakatogawa H, Ohsumi Y |
- Atg3はAIMを介してPAS及び隔離膜に蓄積し膜の伸張を促進する
- Posted by 東京工業大学 フロンティア研究機構 中戸川 万智子
- 投稿日 2015/03/01
Atg3の局在に関しては先日鈴木邦律さんから報告がありましたが、私たちもほぼ同時期にAtg3の局在解析を行っており、興味深い結果も得られましたので報告させて頂きます。
ユビキチン様タンパク質Atg8は脂質分子ホスファチジルエタノールアミン(PE)と結合してオートファゴソーム形成や選択的オートファジーにおける積み荷の選択に重要な役割を果たします。Atg8-PEはpre-autophagosomal structure(PAS)や隔離膜全体に局在することが知られていますが、Atg8-PEの生産の場を明らかにすることはその機能を解明する重要な手がかりとなります。例えば、他の膜で形成されたAtg8-PEがPASや隔離膜に輸送される可能性も考えられるため、私たちはAtg8-PE形成反応のE2酵素であるAtg3の局在を調べることでAtg8-PEの生産の場を検討しました。
鈴木さんの報告にもありましたように、出芽酵母Atg3はC末端あるいはN末端にGFPを融合すると活性を失います。私たちはAtg3の結晶構造(Yamada et al., J. Biol. Chem., 2007)を基に変性領域あるいはループ部分にGFPを挿入した6種類のAtg3-GFPを作製し、その内3つが活性を保つことを見出しました。本論文ではflexible region(FR)にGFPを挿入したAtg3-GFPを用いて解析を行っています。細胞をラパマイシン処理するとAtg3-GFPはPASマーカーであるAtg17と共局在しました。さらにApe1の過剰発現によって隔離膜を可視化すると(Suzuki et al., J. Cell. Sci., 2013)、Atg3-GFPは隔離膜全体に局在することが明らかとなりました。すなわち、Atg8-PEはPASや隔離膜で形成されるというモデルをサポートする結果が得られました。さらに、私たちは3種類のGFP挿入体の解析を進める中で、Atg3のAtg8 family interacting motif(AIM)付近にGFPを挿入するとPASおよび隔離膜局在が減弱することに気づき、Atg3のPAS/隔離膜局在はAIMへの変異導入によって大幅に失われることを明らかにしました。また、Atg8-Atg3中間体形成はAtg3のPAS/隔離膜局在には必要ではありませんでした。以上の結果から、Atg3はそれ自身が生産したAtg8-PEにAIMを介して結合することでPASや隔離膜に蓄積し、さらにそこでのAtg8-PE形成を促進するという、PASや隔離膜でのAtg8-PE生産におけるpositive feedback loopが示唆されました。最後に私たちは、Atg3のAIM変異体おいて隔離膜の長さやオートファジックボディの大きさ及び数が減少することを示し、このようなAtg8-PE生産の促進メカニズムが膜の伸張に重要である可能性を提示しました。
今回私たちはAtg3のAIMを介したPAS/隔離膜局在について報告しましたが、Atg3のPAS/隔離膜局在はAIMの変異だけで完全に消失するわけではありません。Atg12-Atg5-Atg16複合体や既に報告されているAtg3のアセチル化の関与も考えられます。このように他のAtgタンパク質のPASや隔離膜への局在も、複数のタンパク質間相互作用や翻訳後修飾により制御されているのかもしれません。