PubMedID 25831013
タイトル Mitophagy is primarily due to alternative autophagy and requires the MAPK1 and MAPK14 signaling pathways.
ジャーナル Autophagy, 2015 Feb;11(2);332-43,
著者 Hirota Y, Yamashita S, Kurihara Y, Jin X, Aihara M, Saigusa T, Kang D, Kanki T
  • Keimaを用いたmitophagy観察で得られた成果
  • Posted by 新潟大学大学院医歯学総合研究科 神吉智丈
  • 投稿日 2015/04/09

最近発表しましたmitophagyに関する論文を紹介させていただきます。
今回はヒト培養細胞での研究です。
HeLa細胞にミトコンドリア移行シグナルをつけたpH感受性蛍光タンパク質Keima(理研の片山先生、宮脇先生らの論文参照)をTet-offの系で発現させた株を作製し、mitophagyが起こったどうかを蛍光で判定できる系を作りました。この系を用いて、mitophagyが誘導されそうな様々な条件を検討したのですが、結局、長時間の飢餓(10時間以上)か低酸素培養(24時間以上)の条件でしか安心して実験に使えるレベルのmitophagyは誘導できませんでした。この2つ誘導条件で観察したmitophagyから、以下の2つの結論を見いだしました。

1.mitophagyはULK1やBeclin1をRNAiすると比較的効率的に抑制されるのに対し、ATG7、ATG12、LC3のRNAiではあまり抑制しませんでした。RNAiの効率のことも考慮する必要がありますが、Ulk1KOとAtg5KOのMEFでも試したところ、Ulk1KOでは強くmitophagyが抑制されるのに対し、Atg5KOではあまり抑制されませんでした。こうしたことから、私たちの実験系で観察しているmitophagyは、いわゆるAlternative autophagyと呼ばれるATG5やATG7が不要なautophagyに依存している可能性があると考えました。

2.出芽酵母の研究からMAPキナーゼHog1のシグナル経路が必要であることが知られています。哺乳類でも同様の可能性あると考え、幾つかのMAPキナーゼをRNAiした所、p38とErk2の2つのキナーゼがmitophagyに関与していることが判りました。それぞの上流のMAPKKやMAPKKKもmitophagyに必要でした。p38は酵母Hog1のホモログであり、このシグナル経路は酵母もヒトも共通してmitophagyに重要な役割を持っていると考えられます。

本研究は、Keimaを使ったmitophagy観察法のみを利用して行っているので、他の方法で再現を取るという作業ができていないのが欠点です。しかしながら、非常によく研究されているParkin過剰発現株にCCCPを作用させてmitophagyを誘導する方法以外では、オートファジーで分解されるミトコンドリアがそれほど多いわけではないためにmitophagyの観察が困難であり、Keima以外の方法は難しかったというのが実情です。今後は、この観察が難しいmitophagyを何とか見やすくして、研究を発展させていきたいと思っています。