PubMedID 25772617
タイトル An RNautophagy/DNautophagy receptor, LAMP2C, possesses an arginine-rich motif that mediates RNA/DNA-binding.
ジャーナル Biochem Biophys Res Commun, 2015 Mar 13; [Epub ahead of print]
著者 Fujiwara Y, Hase K, Wada K, Kabuta T
  • RN/DNautophagy受容体LAMP2Cの核酸結合モチーフの決定
  • Posted by 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第四部 藤原悠紀
  • 投稿日 2015/04/14

 先日アクセプトされた私たちの論文を紹介させていただきます。

 これまでの研究で私たちはリソソームがRNAやDNAをATP依存的に直接内部に取り込み、分解するという新たな細胞内分解システムを発見し、RNautophagy/DNautophagy (RDAと略記)と名付け報告してきました。これらのシステムにおいてリソソーム膜タンパク質、LAMP2Cが核酸と直接結合し、基質核酸の受容体のひとつとして機能することを報告してはきましたが、具体的にこのタンパク質がどのような機序で核酸を認識するのかは解っていませんでした。

 今回の論文で私たちは、LAMP2Cの細胞質側配列が古典的なRNA結合モチーフのひとつ、arginine-rich motif (ARM) を持ち、この配列中のアルギニン残基がRNAやDNAとの結合に必要であることを見出しました。さらにこの結果から派生して、LAMP1やCD68/LAMP4といった複数のLAMPファミリータンパク質が細胞質側にアルギニン残基を豊富にもち、実際にそれらの配列が核酸と直接結合することも見出しました。この結果は、過去に報告しましたLamp2ノックアウトマウス由来のリソソームにおいてもRDA活性が残っていることと併せて、RDAにおいてLAMP2C以外の受容体が存在することを示唆するものです。

 アルギニンは側鎖にグアニジニウム基と呼ばれる官能基をもち、これにより核酸のグアニンやリン酸基などと水素結合のネットワークを構築できるという、他の塩基性アミノ酸には無い特徴を持っています。核酸に対する結合性の全く見られないLAMP2Aの細胞質側配列にはアルギニンがありません。(蛇足になりますが、LAMP2Aはシャペロン介在性オートファジーにおいて基質タンパク質の受容体として働き、その基質タンパク質との結合にはLAMP2Aの細胞質側配列のKHHHという、アルギニンは無いもののやはり塩基性の配列が必要であると報告されています。LAMP2CのARMと同様、LAMP2AのKHHHも細胞質側配列のN末端側に存在するというのも、興味深い共通点です。)

 多くのARMは結合するRNAに比較的高い選択性を持ちます。LAMP2Cの細胞質側配列はトータルRNA中のほとんどのRNAと結合することができますが、低分子量のものについては結合しないRNAが見られます。LAMP2Cが結合する核酸、ひいてはRDAの基質となる核酸にも配列などに特異性が見られるのかどうかについても、私たちは現在研究を進めています。

 今回の論文は全編 in vitro データのみの細かいものですが、LAMP2Cの核酸結合様式がARMを介したものであることがわかったことで、RDAの分子機構や選択性、生理的役割などについて、いろいろとディスカッションができたと思います。お時間のある時にでもご一読頂ければ幸いです。