PubMedID | 26040717 |
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タイトル | Receptor-mediated selective autophagy degrades the endoplasmic reticulum and the nucleus. |
ジャーナル | Nature, 2015 Jun 3; [Epub ahead of print] |
著者 | Mochida K, Oikawa Y, Kimura Y, Kirisako H, Hirano H, Ohsumi Y, Nakatogawa H |
- 小胞体と核の選択的オートファジーを駆動する2つのレセプタータンパク質
- Posted by 東京工業大学 生命理工学研究科 持田 啓佑
- 投稿日 2015/06/10
最近発表しました私たちの論文を紹介させていただきます。
出芽酵母では、大部分のオートファゴソームに小胞体(ER)の断片が取り込まれていることが報告されており(Hamasaki et al., 2005, Traffic)、オートファジーを介してERを積極的に分解するメカニズム(ER-phagy)の存在が示唆されていましたが、その詳細は明らかにされていませんでした。
私たちは、質量分析により同定したAtg8結合タンパク質の中に、2つのER局在タンパク質が存在することを見出し、それぞれをAtg39, Atg40と名付けました。2つのタンパク質に配列類似性はありませんが、Atg8やAtg11との結合を介してER-phagyを駆動することなどから、両者が共にER-phagyにおけるレセプタータンパク質であることを結論付けました。
また興味深いことに、Atg39とAtg40はそれぞれ異なるER領域に局在しました。Atg39は核周囲のER(出芽酵母では核膜に相当)に存在し、核膜由来の二重膜小胞のオートファゴソームへの取り込みを媒介しました。驚くことに、この二重膜小胞の内部には核内の成分が存在し、Atg39をレセプターとするオートファジーが核の一部をも分解し得ること、すなわちnucleophagyとも呼ぶべき現象であることが明らかとなりました。一方、Atg40は主に細胞膜直下や細胞質のERに存在し、これらのER領域を折りたたまれたチューブあるいはシート状のERとしてオートファゴソームに積み込み、分解することを明らかにしました。
長時間の窒素飢餓条件において、Atg39を欠失した細胞は野生株より早く生存率が低下すること、Atg40を欠失した細胞は細胞膜直下のERの形態に異常が見られることなどから、Atg39/40を介したER-phagy/nucleophagyの生理的重要性が示唆されます。飢餓に応答してERや核内の成分を分解し、栄養源として再供給する可能性や、異常となったER/核内の成分を除去する可能性などが考えられます。
また、本研究と同時に、ドイツのIvan Dikic博士らのグループが、遺伝性感覚神経障害の原因遺伝子であるFAM134Bが哺乳動物におけるER-phagyのレセプターであることを報告しています。FAM134Bは、膜曲率の高いER領域の形成・安定化に重要なreticulonタンパク質ファミリーに類似したドメインを持っていますが、同様の特徴がAtg40にも見られることから、FAM134Bが哺乳動物におけるAtg40の機能的ホモログなのではないかと考えています。また、アミノ酸配列から予測されるAtg39のホモログは近縁種の酵母にしか存在しませんが、オートファジーによる核の分解は他の生物種でも報告があることから、同様の機能を果たすタンパク質は高等生物にも存在するかもしれません。