PubMedID 26061644
タイトル A defect of the vacuolar putative lipase Atg15 accelerates degradation of lipid droplets through lipolysis.
ジャーナル Autophagy, 2015 Jun 10; [Epub ahead of print]
著者 Maeda Y, Oku M, Sakai Y
  • オートファジーフローの破綻が引き起こすリポリシスの亢進
  • Posted by 京都大学大学院 農学研究科 応用生命科学専攻 奥 公秀
  • 投稿日 2015/06/12

最近公開されました私どもの研究成果についてご報告いたします。
 オートファジーにおける細胞質成分の隔離、液胞・リソソームへの輸送、分解という一連の流れ、いわゆるオートファジーフローが持つ生理機能については、当初はアミノ酸のリサイクリングという側面が詳細に調べられましたが、最近は核酸などの他の生体構成成分の細胞内(外)動態に関する重要性が明らかとなりつつあります。私たちは今回、オートファジーフローが脂質動態におよぼす影響を見出しました。具体的には、定常期の出芽酵母において液胞内リパーゼであるAtg15を欠損させると、中性脂質の蓄積の場である脂肪滴の量が減少することを明らかにしました。このAtg15欠損株を親株に、マクロオートファジーに機能するAtgタンパク質をさらに欠損させると脂肪滴の減少が見られなくなることから、マクロオートファジーによって液胞に輸送された成分の分解阻害が脂肪滴減少の要因だと分かりました。この脂肪滴の減少は、中性脂質の合成能がAtg15欠損株で減少していたからではなく、リポリシスと呼ばれる中性脂質分解機構がこの欠損株で亢進することに起因していました。また興味深いことに、Atg15欠損によりもたらされる、定常期における細胞生存率の低下が、リポリシスに機能するリパーゼの欠損により部分的にですが抑制されることが分かりました。
 今回の発見から、細胞内の脂質の恒常性維持のためオートファジーとリポリシスが連関している様子が明らかとなりました。今後の研究課題としては、Atg15欠損株で見られるリポリシス・リパーゼの発現量およびリン酸化状態の変化を手掛かりとして、オートファジーフローの破綻が誘導する、新たな転写・翻訳後修飾機構の実態を解明したいと考えています。